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フェミニストたちの政治史―参政権、リブ、平等法 [著]大嶽秀夫

[評者]齋藤純一(早大教授)

[掲載]2017年05月07日

[ジャンル]政治

表紙画像

■不利強いる慣行の問い直しを

 本書は、19世紀から現代にいたるフェミニズム運動の軌跡を辿(たど)る。
 興味をひかれるのは、フェミニズムが、20世紀半ばまでは、社会民主主義と親和的だったのに対して、70年代半ば以降、新自由主義と結びつく方向に転じた、という多分に論争的な主張である。
 フェミニズムの運動は、女性が自由であるための生活条件(福祉)の構築に寄与してきたが、やがてその自由の擁護は男女を問わず個々人の能力を重視する政策と結びついていった、という見方である。
 日本では80年代後半から2000年代にかけて、「男女雇用機会均等法」、「男女共同参画社会基本法」、「DV法」などの制定や改正が相次いだ。たしかに、この時期は、保守政権によって新自由主義的な政策が推進された時期と重なる。
 人口減少が避けられない条件のもとで女性の能力を活用することは、経済界の要請にもマッチするし、女性の広範な支持を得ることは、政権基盤の強化にも資する。現政権が取り組む待機児童問題の解消にも、明らかにこうした関心がはたらいている。
 昨年公表された世界経済フォーラムの男女格差指数(日本は144カ国中111位に後退)が指摘するのは、この間の女性政策が、実質的な機会の平等を構築する方向には進んでいないという事実である。
 女性一般を不利な立場におく規範や制度が根本から問い返されず、機会均等の保障が形式的なものにとどまるなら、女性の間にも広がる経済格差は、女性を分断していくことになろう。
 著者は、「フェミニズムの思想、主張は、不可逆的な流れとして、日本政治の中に組み込まれた」とする。だが、この思想の何が日本の政治に組み込まれていないかを問うことこそ重要なのではないか。
 機会均等のもと、不利な立場を女性に強いる規範や慣行は、まともに問い直されてきただろうか。
    ◇
 おおたけ・ひでお 43年生まれ。京都大学・東北大学名誉教授。著書に『高度成長期の政治学』など。

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