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人はこうして「食べる」を学ぶ [著]ビー・ウィルソン

[評者]円城塔  (作家)

[掲載]2017年05月07日

[ジャンル]医学・福祉

表紙画像

■体が求めるもの、選びとる技術

 終章で著者はこう記す。
「食べることは技術である」
 本書が示すのは、食べることは本人の嗜好(しこう)に加えて習慣や文化の影響が大きいという事実である。
 たとえば、幼児に様々な食品を食べさせるには、まずその外見に少しずつ慣れさせる必要がある。おいしいから食べ続けるのか、食べ続けているからおいしいのかには、決定的な答えがない。
 そうして、食べることについての考え方には流行があり、思い込みもまた大きい。
 一方に、子供は健康的な食品を嫌うものだという決めつけがあり、野菜は無理やり食べさせるものとされたりする。他方で、子供は自分に必要なものがわかっているので、好むものを自由に食べさせるのがよいとされたりもする。
 子供だって大人と同じく、砂糖や脂肪の誘惑には負ける。それでも幼児の方が自分の満腹感を正確に把握している点ではすぐれている。大人は目の前に料理があればつられて食べる。
 子供のことを気にせずに好きにさせた場合に、肥満の傾向が現れることは不思議ではない。しかし、子供の感情を無視して厳しい要求をつきつけ続けた場合にもまた、肥満の傾向は現れるという。
 命令される形ではなく、自らの選択としてでなくては、バランスは崩れがちとなり、過食や拒食が現れたりする。
 現代社会における肥満の増加は、食料供給の変化に食習慣の変化が追いついていないことも原因である。
 大人であっても、食習慣を変えることは可能だ。もっとも、大人は親に頼れないから、改善には技術が必要になる。技術は学ぶことが可能だ。
 本書で著者が成功例としてあげているのは日本の食習慣であったりする。戦前の、豊かとはいえない栄養状態から、国際的に見れば肥満の少ない状態へ生活習慣を変えることができたという事実を評価している。
    ◇
 Bee Wilson 74年生まれ。英国のフードジャーナリスト、歴史学博士。著書に『食品偽装の歴史』など。

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