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グリーンスパンの隠し絵―中央銀行制の成熟と限界 上・下 [著]村井明彦

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2017年06月04日

[ジャンル]政治 経済

表紙画像

 本書は、第13代米連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めたアラン・グリーンスパンの金融政策が彼の哲学・経済学と整合的に理解可能なことを示す労作だ。
 著者は、グリーンスパンが私有財産保護、徹底した経済的・政治的自由、そして制限/無政府主義を説く「リバタリアン」であることを明らかにする。彼は、中央銀行が公債を買い入れ、インフレで財産価値を毀損(きそん)させつつ福祉国家を支える現代のスキームに警告を発する。金本位制ならこうした政策に出る幕はなく、財産価値も守られるのに、と。
 「中央銀行を嫌うFRB議長」とはたしかに形容矛盾だ。しかし著者は、グリーンスパンが自らの思想に忠実で、金本位制の自動調節機能があたかも機能しているかのように、密(ひそ)やかに金融をコントロールする手腕の極致に達した点を高く評価する。だがそれゆえ/にもかかわらず、防げなかったリーマン・ショックをどう考えるか、著者の次回作にも期待したい。

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