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小林秀雄と河上徹太郎 [著]坂本忠雄

[評者]佐伯一麦 (作家)

[掲載]2017年06月25日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 開高健は、5歳下の著者に対しての敬愛を氏らしい言い方で、「“カツアゲ(脅迫)の坂本”と業界で日頃から呼ばれている辣腕(らつわん)家」と表現していた。
 1959(昭和34)年から36年間にわたって文芸誌「新潮」の編集部に属した著者は、まず河上徹太郎の、やがて小林秀雄の担当にもなり、両氏が亡くなるまで批評活動に伴走した。本書は、身近に接した者による回想にとどまらず、倒叙二人史の形式で、小林と河上の精神を対比させながら、作品の言葉を読み解く。「単に眼(め)で字面を追うばかりでなく、耳を澄ませてその文章の底に流れている語調とリズムをできるだけ注意深く聴き取ることを努めて自らに課し」て。
 河上のピアノ、小林のバイオリン好きに触れて、言葉を探りながら立体的に積み上げていく河上と、自ら言葉を直感的に創(つく)り出していく小林との文体の対照を見いだすなど卓見に満ち、読書の神髄は尽きない再読にあることを示唆する。

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