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落語魅捨理全集―坊主の愉しみ [著]山口雅也

[評者]末國善己(文芸評論家)

[掲載]2017年07月02日

[ジャンル]歴史 文芸

表紙画像

 落語家が探偵だったり、演目がヒントになったりする落語ミステリーは多い。著者5年ぶりの新作も落語ミステリーだが、従来の作品とは一線を画している。
 著者は、古典落語と同じ江戸を舞台に、マクラ、本題、サゲと進む落語のルールの中に意外な展開を織り込んだのだ。これは、落語の構造とミステリーを融合させた新機軸といえる。
 しかも、語呂合わせを使う地口オチだけでなく、考えオチ、楽屋オチ、夢オチなど多彩なサゲを用意し、それにあわせて意表をつく結末を作っているので、収録の7作はバラエティーに富んでいる。本書に密室ものが多いのは、江戸時代の建物で密室を作るのは難しいことを踏まえたパロディーになっているなど、異色のミステリーを書いてきた著者らしい遊び心も面白い。
 思いもつかない着地点になる「坊主の愉(たの)しみ」、どんでん返しが連続する「そこつの死者は影法師」は特に傑作。落語好きも、ミステリー好きも満足できる。

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