書評・最新書評

人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか [編]玄田有史

[評者]加藤出 (東短リサーチチーフエコノミスト)

[掲載]2017年07月02日

[ジャンル]経済

表紙画像

 BIS(国際決済銀行)が先日発表した年次報告書は、世界的に先進国で賃金上昇が遅くなっている問題を指摘した。グローバリゼーションやオートメーション、ITによる省力化の拡大がその主因だという。
 しかし、日本の賃上げの遅さは他にも理由がありそうだ。有効求人倍率は遂(つい)にバブル期を超えたが、直近の実質賃金指数前年比はゼロ%だ。本書はこのパズル(謎)に果敢に挑戦した実にタイムリーな一冊である。
 労働経済学の第一線の研究者が多様な観点から16本の論文を寄稿している。統計的問題で賃上げが実態より遅く見えている面もあるが、市場の歪(ひず)み、上方硬直性、高齢化、非正規雇用や就職氷河期世代の問題等々、多数の構造的要因が賃金上昇を抑えてきたことが読み進むと見えてくる。
 また、企業による人材育成は衰退しただけに、「未来に向けて」、新たな能力開発の機会を設けるべきだとの提言も非常に重要と思われる。

関連記事

ページトップへ戻る