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生きる職場―小さなエビ工場の人を縛らない働き方 [著]武藤北斗

[評者]宮田珠己(エッセイスト)

[掲載]2017年07月09日

[ジャンル]経済 社会

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■信用し、任せることで成長導く

●欠勤の連絡はしなくていいどころか禁止。
 →連絡するほうも気が重いし、もらう側も、来ると思っていた人が急に来ないとなればストレスを感じてしまう。はじめから分からなければ気にならない。
●嫌いな作業はやらなくていい。
 →好きな作業・嫌いな作業について全員にアンケートをとり、各自の好きを優先。誰もが嫌いな作業は公平に分担する。
 こんな夢のような職場があるらしい。
 社員2人、パート従業員9人の小さなエビ工場。
 ルールはほかにもいろいろあるけれど、どれも従業員に有利なものばかり。
 経営側がこうした思い切ったルール作りをすることで職場の雰囲気がよくなるのは想像できる。だが当然気になるのは、それで会社が回るのかということだ。
 とても無理に思えるが、実際は作業効率が格段にあがり、商品の品質も向上したうえ、人件費まで削減されたというから驚く。
 職場ルールを改善して効率がアップした話はこれまでにも聞いたことがある。だが、この会社の大胆さは群を抜いている。なぜこんなことができたのか。
 逆に、なぜ他の会社にそれができないのかと考えてみるとき、まず立ちはだかるのは、従業員の裁量に100%委ねることへの不安だ。
 サボるんじゃないか?
 経営側がこの疑心暗鬼を越えられるかどうか。
 いいんじゃないの、サボったって。そう思える度量こそがきっとスタート地点なのだろう。
 これは親や教師が日々向き合っている問題にも似ている。なぜ子どもを信用して任せられないのか。2児の親である自分はいつもそこで逡巡(しゅんじゅん)する。
 工場長である著者は書いている。「疑い」「縛り」「争う」ことが成長を妨げていたと。
 成長の限界を突破できるかどうかの鍵がここにある。そんな気がした。
 評・宮田珠己(エッセイスト)
    ◇
 むとう・ほくと 75年生まれ。海産物加工会社の工場長。2011年に工場が津波で被災したため、大阪で再出発。

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