書評・最新書評

発酵文化人類学―微生物から見た社会のカタチ [著・イラスト]小倉ヒラク

[評者]山室恭子(東工大教授)

[掲載]2017年07月09日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■菌も人間も両方うれしい関係

 みんなあつまれ。シェフ・ヒラクの発酵クッキング、はっじまるよ〜♪
 まずは、用意するもの。
 ◇ホモ・ファーメンタム 醸(かも)す人=つまり私たちのこと 適量
 ◇醸す菌 適量
 ◇醸される食材 今日は大豆とお米です
 この三つだけ。超シンプルでしょ。
 さあ、各テーブルでクッキングが始まります。こちらでは大豆を煮てつぶして、こうじ(菌)と塩を振りかけて、おだんごをつくっています。あ、味噌(みそ)ですね。「おみそ みそ みそ 手前みそ うちの数だけ みその味」。みんなで歌って楽しそう。
 おや、お隣のテーブルは、しんと緊張しています。大豆と麦、こうじと塩、ほぼ同じ材料なのに、できあがりがさらさらしてて。うん、この香り、おしょうゆだ。おもしろいですねえ、ヒラクさん。
 「しょうゆは味噌より、こうじの比率がぐっと高いので、扱いがむずかしく集中力が必要なんです」
 ときに発酵と腐敗って、どう違うんですか?
 「おんなじですよ。人間が食べてもOKな腐敗を発酵って呼んでるだけです」
 なるほど。人間本位で分けてるんですね。じゃあ、利用される菌たちはいい迷惑ってこと?
 「そこがポイントでね。菌にとって発酵って、とことんしぼりつくさない非効率なエネルギー獲得法なんです。だから菌が分解できなかった残り物を人間がいただける。菌も人間も、両方うれしい。これって、文化人類学者が南の島で見つけた、いっけん合理的じゃないのに、うまいこと回ってる贈り物儀礼と、とてもよく似てるんですよ」
 ふうん、みんなが贈り物しあう、ぐるぐる回りの関係ですか。深いですねえ。
 あ、あっちで超レアな伝統技法「生もと(きもと)」で日本酒を醸してる。ダッシュだ!
 来週は海外編、ブルガリアでヨーグルトを醸しちゃいます。お楽しみに〜♪
 評・山室恭子(東京工業大学教授・歴史学)
    ◇
 おぐら・ひらく 発酵デザイナー。東京農大で発酵学を学ぶ。絵本『おうちでかんたん こうじづくり』など。

関連記事

ページトップへ戻る