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熟議民主主義の困難―その乗り越え方の政治理論的考察 [著]田村哲樹

[評者]齋藤純一(早大教授)

[掲載]2017年07月09日

[ジャンル]政治

表紙画像

 先の国会では熟議が公然と蔑(ないがし)ろにされたが、市民社会ではどうだろうか。本書は、熟議の場が、議会や市民参加のフォーラムだけではなく多層的に存在することを強調する。熟議は家族や職場でも行われるし、自由民主主義の内部に限定されるものでもない。
 熟議は、強制のない反省を促すコミュニケーションの様式である。より正確な情報を取得し、異なった意見に接すれば、人々の選好や意見は変わることがある。民主主義は熟議に媒介されるなら、ムードに順応するのとは違った意思形成を導くが、その熟議に向けて人々を促すにはどのような手立てがあるだろうか。
 本書は、労働を免れた時間や問題関心を喚起するレトリックなど、人々を熟議へと導く仕組みを意味する「アーキテクチャ」に注目する。数やカネではなく、言葉の力を社会の様々な場面に取り戻す具体的な装置をどうつくるか。本書はこの課題について考えるための格好の手引きになる。
 齋藤純一(早稲田大学教授)

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