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我々みんなが科学の専門家なのか? [著]ハリー・コリンズ

[評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)

[掲載]2017年07月09日

[ジャンル]人文 科学・生物

表紙画像

 今の世の中、その道の専門家に頼らなければできないことばかりだけれども、肝心のその専門家が、どうにも信頼できない。私たちは専門家をどのように使いこなせばいいのか? 本書は、専門知や専門家の特徴を分析した導きの糸だ。
 著者は専門家が身につけている暗黙知の重要性を強調する。学術的な専門論文を読んで知識をたくさん得ても専門家にはなれない。その知識を評価する枠組みや尺度が必要で、それらは専門家集団の中で長い時間を過ごすことでしか身につかないからである。
 したがって、専門家がおかしなことを言っているように見えても、そこには理由があって、実はそうではないことがほとんどだ。
 素人が科学者を批判するべき領域は、他にある。日常生活の価値観や地域社会の特異性に立脚して、専門家の独善や独走に警鐘を鳴らすのである。専門家と素人の有効な役割分担に至る道のりは険しいが、本書がその一助になることを祈ろう。
 佐倉統(東京大学教授)

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