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PTAという国家装置 [著]岩竹美加子/ある日うっかりPTA [著]杉江松恋

[評者]末國善己(文芸評論家)

[掲載]2017年07月16日

[ジャンル]人文

表紙画像

■経験者が教える変えるヒント

 役員を押し付けられた、無駄な仕事が多いなどPTAへの不満は多いのではないか。今回は、公立小学校のPTAで仕事をした経験がある2人の著者が、誰もが抱く疑問に答えてくれるPTA本を紹介したい。
 日本のPTAは、第2次大戦後にGHQの指導で作られた。だが岩竹美加子『PTAという国家装置』は、現在のPTAが、学校に財政援助をした父兄会、学校と隣組を奉仕活動で支えた母の会といった戦前の団体を引き継ぐ形で組織されたことを明らかにする。
 PTAは、ベルマークを集めて学校の備品を購入し、町内会の行事を手伝うこともある。こうした奉仕のあり方が、戦前からの伝統というのは驚かされる。
 さらに岩竹は、戦前の母の会が国家による国民の管理統制に使われた歴史を踏まえ、PTAにも同じ危険があるとする。この知られざる事実は、すべての日本人が胸に刻む必要がある。
 書評家、ライターとして活躍する杉江松恋は、団体行動が苦手で、金髪に髭(ひげ)がトレードマークだった。そんな杉江が、突然PTA会長に指名される。『ある日うっかりPTA』は、職業病ともいえる好奇心でPTAの世界に飛び込んだ杉江の3年間の奮闘の記録だ。
 新会長の杉江は、PTAは行政組織で、その活動には官への協力が盛り込まれている現実を突き付けられる。それを不満に思う杉江だが、仕事を投げ出さず現場でできる改革を始める。
 役員が無理をしないよう「がんばらない、をがんばろう」をテーマに掲げた杉江は、PTA会室を交流の場にしたり、仕事の負担を減らすためワーキングシェアの原理を導入したりする。こうした取り組みは、学校の常識に挑む若手教師を描いた学園ドラマや、組織改革を題材にした企業小説を読むような楽しさがある。
 マクロの岩竹とミクロの杉江は視点が違うが、共にPTAを変えるヒントを与えてくれる。PTAの関係者には特にお薦めしたい。
    ◇
 いわたけ・みかこ 55年生まれ。ヘルシンキ大非常勤教授▽すぎえ・まつこい 68年生まれ。書評家。

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