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琉球文学論 [著]島尾敏雄

[評者]佐伯一麦 (作家)

[掲載]2017年07月16日

[ジャンル]社会

表紙画像

 奄美群島内の加計呂麻島を舞台に、島尾敏雄と妻ミホとの戦時下での出会いの物語を越川道夫監督が映画化した「海辺の生と死」の試写を観(み)て、満島ひかりのうたう哀切な島唄に惹(ひ)きつけられた。映画でも唄(うた)われる「やまとっちゅと縁結べば落とさなくていい涙を落としますよ」という思いをうたった歌について、「まず、そういう文学を考えてみようとしている」と本書で島尾は語る。シマとヤマトをはっきり区別している琉球方言で書かれた文学もまた、「日本列島語」による表現ではないのか、と。
 福島県相馬にルーツを持つ著者は、日本の歴史から欠落していたという意味で、南島の琉球弧とともに東北も視野に入れ、「日本の国が大きな歴史的転換を行うときに」「指導者たちは、北と南とが気になる」と指摘する。3・11後、過去の文学が新たな意味を持つことがあった。封印が解かれ41年前の講義録が蘇(よみがえ)った本書の論考もまさしく、いまこそ読まれて欲しい。

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