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枕草子のたくらみ―「春はあけぼの」に秘められた思い [著]山本淳子

[評者]サンキュータツオ(お笑い芸人、日本語学者)

[掲載]2017年07月16日

[ジャンル]歴史 文芸

表紙画像

 名作を当時の人の心で読むのは難しい。現在語られていることを一度すべて忘れて、その時代になにがあったのか、人々はどういう生活をし、なにに関心があったのかを想像すること。この、難しいけれど大事な作業のために、我々は教養を身に着ける。
 中宮定子に仕えた清少納言の作品が、なぜ敵方ともいえる彰子の時代になっても、黙殺されることなく読み継がれたのか。春といえば、多くの日本人が「桜」をイメージするはずなのに、なぜ「枕草子」では「春はあけぼの」と、朝という「時間」を取り立てたのか。本文に書かれていないこれらの疑問を考える愉(たの)しみのために、読者は著者の教養を拝借する。これが読書の醍醐味(だいごみ)だ。
 主に紫式部の研究をしてきた著者が、ほぼ同時代の清少納言「枕草子」に正面から切り込んだ意欲作。古文にすべて現代語訳が付してあるのもうれしい。古典を心に抱き、古典に抱かれる贅沢(ぜいたく)な時間をどうぞ。

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