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ソヴィエト・ファンタスチカの歴史 [著]ルスタム・カーツ

[評者]円城塔  (作家)

[掲載]2017年07月23日

[ジャンル]歴史

表紙画像

 ソビエト社会主義共和国連邦は、「正しい科学」や「正しい文学」のありかたを国が定めようとした。
 結果、「政治的に正しい科学にのっとった空想科学小説」という珍妙な分野が、国の支援の下に花開くことになった。
 といったあたりでもう笑いだしてよいと思うのだが、真面目な方のために解説すると、本書は「赤い月面人」なる文芸サークルを軸に、伝記や作品を紹介しながらその奇妙な分野の通史を提示する本である。
 というのが建前なのだが、読み進めていくと、訳もわからず笑いだすことになるはずである。
 どこで笑いはじめるかで、文学的な感性をはかることができる本ということになるかもしれない。
 抑圧的な体制は、こういう種類の本を読んで笑うことを真顔で禁じ、それによって自分自身が笑いものにされてきたのだが、この頃(ごろ)はこの種の本を手にとると、怒りだす人の方が増えてきているようにも思う。

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