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キマイラの原理―記憶の人類学 [著]カルロ・セヴェーリ

[評者]蜂飼耳(詩人・作家)

[掲載]2017年08月20日

[ジャンル]人文

表紙画像

 近年の人類学は、従来の「自然/社会」「科学/文化」「近代/未開」といった近代的な分割を乗り越えようとする展開を見せている。本書は、人類学者カルロ・セヴェーリの研究を、初めて日本語で翻訳紹介する画期的な一冊。やや難しい箇所もあるが、言語と文化、イメージ、詩に関心を持つ読者は、いくつもの想像の源泉と出会うだろう。
 著者は、特定の地域研究の枠にとらわれない。多分野の研究手法を横断し、時代や文化の隔たりを超えた「比較」研究へ向かう手法を模索する。これまで「口承的」と呼ばれてきた無文字社会で記憶はいかに継承されてきたのか。アメリカ先住民の絵文字やオセアニアのイメージなどが分析の対象となる。
 記憶が社会的に共有される「儀礼」の場に焦点を定めた本書の探求は、社会的記憶の構築と伝達、そこに関わる言葉とイメージの役割を考察することへ向かう。人間をめぐる新たな視点が切り拓(ひら)かれる。

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