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書架の探偵 [著]ジーン・ウルフ

[評者]円城塔  (作家)

[掲載]2017年08月20日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 図書館の棚に、男が一人横になっている。彼はかつて存在した作家の記憶を植えつけられたクローンである。オリジナルはミステリ作家だった。要望があれば貸し出される。
 生物学的には人間だが、完全に物として扱われる。制度上、そうなっている。
 彼の小説の主人公と同様に慇懃無礼(いんぎんぶれい)な口調で喋(しゃべ)る。
 ある日、彼は借り出され、自分では書いた記憶のない本をめぐる謎と遺産の争奪戦に巻き込まれる。
 といったあらすじからは、SFかミステリが予想されるかもしれないのだが、ジーン・ウルフはいつものとおり、こちらの予想をかわしてくる。
 ウルフはよく、意地の悪い書き手とされる。何かを遠回りしながら書く。読者は、文中のちょっとした違和感を手掛かりに、面白さを自分で探していかなければならない。
 だからウルフの作品はときに、その本が面白いのか、読み手が面白い人間なのかわからなくなることがある。

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