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キジムナーkids [著]上原正三

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)

[掲載]2017年08月27日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■略奪と幽霊と、戦後沖縄の冒険譚

 戦争が終わり、「ボク」は疎開先の熊本から沖縄に帰ってきた。故郷は変わり果てていた。——敗戦後まもない沖縄を舞台にした少年たちの物語である。
 「ボク」は小学5年生。緊張すると洟(はな)が垂れるのであだ名はハナー。
 最初からいってしまうとめっちゃおもしろい。なにしろ悪ガキたちがつるんでガジュマルの樹(き)の上に「キジムナーハウス」なる秘密基地を築き、ときには米軍のトラックを狙い、ときには配給所に忍びこんで略奪に励むのだ。戦果品はアイスクリームの粉末缶、黄桃缶、コンビーフ入りのKレーション(米軍の野戦食)、チョコレート……。
 おまわりさんもタバコ一箱でイチコロだ。
 〈「これ、戦果」/「アメリカーから」/「アメリカーから略奪した戦果品? それならよろしい」〉
 おいおいおい。
 少年文学の王道を行く冒険譚(たん)でありながら、同時にそこは約10万の民間人が犠牲になった地上戦の舞台でもある。ひめゆり学徒隊に動員された同級生たちの亡霊を見る「ボク」の姉。グラマン戦闘機の機銃掃射で母と兄と右手を失った少年ポーポー。とりわけ集団自決した村で生き残り、言葉を忘れた少年ベーグァの体験は胸に迫るものがある。
 「この一帯、死体の山なわけさ」「お前たちも死体の上を歩いて学校に来るわけ」。上級生におどかされた「ボク」は幽霊が怖くて仕方がない。
 が、父はいうのである。だったら幽霊と友だちになりなさい。「戦場では、みんな幽霊だ。幽霊にならなきゃ生きていけない」。幽霊も仲間なんだ、だから怖くはないんだ、と。
 底抜けに明るい沖縄の空と海を背景に、黙々と骨を拾う人がいる。生者も死者もマジムン(おばけ)もキジムナー(妖精)もそれぞれ存在感を主張する。特撮ドラマのシナリオを多数手がけてきた著者の体験をベースにした初の小説。新しい戦争文学の誕生である。
    ◇
 うえはら・しょうぞう 37年、沖縄生まれ。シナリオライター。著書に『金城哲夫 ウルトラマン島唄』など。

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