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海賊の世界史 [著]桃井治郎

[評者]市田隆(本社編集委員)

[掲載]2017年08月27日

[ジャンル]歴史

表紙画像

 船や町を襲撃して略奪する海賊は、現代では許されない犯罪者集団だろう。だが、本書は、富を奪い合う国家間の戦争が絶えなかった歴史の中で海賊が多様な顔を見せてきた史実を伝える。古代ギリシャの昔から登場してきた海賊は、国家権力への反逆者だったり、国から表彰される英雄だったりと、単純に割り切ることができない存在だった。
 その一例が、16世紀にスペインの無敵艦隊を破ったイングランド艦隊の英雄、フランシス・ドレーク。彼の前歴はスペイン輸送船から略奪を繰り返した海賊だったが、国に持ち帰った財宝を喜んだエリザベス女王から叙勲されたという。
 そのイギリスなど列強が19世紀に正義を掲げて海賊退治をしたことは、国家の身勝手な振る舞いに映る。国家と海賊が利益のためなら手段を選ばない点で大差ないように思えるのは、本書で歴史の深層に触れたからだ。教科書で習った世界史と違う側面が次々と浮かび、読者を飽きさせない。

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