書評・最新書評

平成の天皇制とは何か―制度と個人のはざまで [編]吉田裕・瀬畑源・河西秀哉/生前退位―天皇制廃止―共和制日本へ [編]堀内哲

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)

[掲載]2017年09月03日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

■「おことば」契機、違う角度から

 退位をにじませた現天皇の「おことば」発表から1年がたった。一般人だけでなく少なからぬ学者も退位を支持し、「おことば」を評価するなか、いささか異なる角度から天皇制を考察した2冊の本が出た。
 『平成の天皇制とは何か』は、歴史学者や憲法学者9人の論文を集めたものだ。若手ほど「平成流」と呼ばれる天皇制の特徴を淡々と分析し、私見をはさまないようにしているのに対して、年配ほど現天皇や「おことば」に批判的な姿勢を打ち出している。
 より面白く感じたのは後者のほうである。最年長に当たる渡辺治の論文は、タイトルからして「近年の天皇論議の歪(ゆが)みと皇室典範の再検討」と穏やかでない。論壇で活躍している憲法学者たちをなでぎりにし、憲法と天皇制の間に横たわる矛盾や乖離(かいり)をあぶり出す筆致には迫力を感じる。
 それなら天皇制自体を廃止してしまえばよいではないかというのが『生前退位—天皇制廃止—共和制日本へ』の編者、堀内哲の考えである。主要政党や朝日新聞を含む主要マスコミが天皇制廃止を唱えていない現在、こうした本が出ることは言論の自由を確保する上で意味がある。
 しかし、堀内哲と対談している杉村昌昭や斎藤貴男は、編者の思いに共感を寄せつつも、天皇制廃止が自己目的化し、それさえ達成できればよいと言わんばかりの姿勢に疑問を投げかける。編者の意図とは裏腹に、この本は日本で共和制を実現させることの難しさを浮き彫りにしているように思われる。
 一方、『平成の天皇制とは何か』の執筆者は、誰一人として天皇制を廃止すべきだとは言わない。だが渡辺治の論文の最終節には、そのための条件がかえって鮮明に提示されている。それがどれほど厳しい条件であるかを結果として示している点では、『生前退位—天皇制廃止—共和制日本へ』と無縁ではないという見方もできよう。
    ◇
 よしだゆたか54年生まれ、せばたはじめ76年生まれ、かわにしひでや77年生まれ▽ほりうちさとし70年生まれ

関連記事

ページトップへ戻る