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写真集―沖縄1935 [編]週刊朝日編集部

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)

[掲載]2017年10月08日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

 琉球王国の時代から、沖縄では女性の地位が高かった。国王とは別に聞得大君(きこえおおぎみ)と呼ばれる最高位の巫女(みこ)もいた。明治以降も、久高(くだか)島には女性しか参加できない祭りがあり、糸満(いとまん)には女性が男性とは別に財産をもつ習慣があった。
 太平洋戦争が始まる前、1935年の沖縄の風景を数多く収めた本書では、そうした本土とは異なる沖縄の姿がとらえられている。まず何よりも写っている女性の数が多い。働く女性も買い物をする女性もみな生き生きとしている。彼女らは、沖縄ならではの集落や自然のなかにすんなりと溶け込み、穏やかな日常を形づくっている。
 45年の地上戦で徹底的に破壊され、戦後は米軍基地が置かれた沖縄に、もはやこうした風景はない。だが本書は単に貴重な写真を収めただけではない。いまなお政界や企業などで男性中心の文化が根付く本土の読者として、本書は「日本」を相対化する視座を提供していると感じた。

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