書評・最新書評

昆虫の交尾は、味わい深い…。 [著]上村佳孝

[評者]野矢茂樹(東大教授)

[掲載]2017年10月15日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

 昆虫や交尾に興味がなくとも、人間(昆虫の交尾なんて研究に情熱を傾ける人間という面白き存在!)に興味があれば、本書は楽しめる。著者は昆虫を観察し、読者はそんな著者を観察するのである。
 ハサミムシのオスの挿入器は二本ある。なぜ? 調べてみる。どうも右しか使っていない。左は何のためだろう。そこで右挿入器を取って交尾させ、左を使うかどうか試してみる。結果は? いや、結果より、この研究の過程が楽しい。最先端の機器など不要。ピンセットをもって虫たちに向かう。ここには昔ながらの手作業の科学がある。
 ところで昆虫の交尾ってどうやって観察すると思います? あのね、交尾している彼らを液体窒素に入れて固定するんですよ。なんまんだぶ。しかしあなた、我が身に引きつけて考えてごらんなさい。交尾の最中に瞬間冷凍されて結合部を観察されるなんて、死んだ方がましである。(いや、死んでいるのだが。)

関連記事

ページトップへ戻る