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復興百年誌―石碑が語る関東大震災 [著]武村雅之

[評者]山室恭子(東工大教授)

[掲載]2017年10月22日

[ジャンル]歴史 社会

表紙画像

◇神奈川県民頌徳(しょうとく)碑◇
 九十四年前の秋、祈りの声が地に満ちた。激震が県全域を襲い、家屋倒壊と火災と津波に幾万の人命が露と消えた。県民たちは各地に慰霊碑を建てて死者を弔った。公募にて選ばれし厚木町の碑名は「あゝ九月一日」という。
 やがて復興の歩みが進んだ。県民たちは浄財を醵出(きょしゅつ)して用水を引き耕地を整理し、竣工(しゅんこう)するごとに、その地に碑を刻んだ。江の島奥津宮参道の再建鳥居の脇には、旧鳥居の残材にて作られし奉納者名碑が寄り添っている。
 震災から十二年を経て、藤沢市亀井神社の復興記念碑は追憶する。「苦しき試練は人を偉大ならしめ、大災の人生に与うる教訓の深甚測り難きもの存す」と。至言なり。未曾有(みぞう)の天災と対峙(たいじ)して不断の努力を重ねた県民各位の足跡が、六百三十四件の石碑などを踏査した武村雅之氏の高著によって蘇(よみがえ)った。神奈川県民の偉業に畏敬(いけい)と感謝の念を捧げ、ここに頌徳碑を建立する。

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