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国家がなぜ家族に干渉するのか―法案・政策の背後にあるもの [編著]本田由紀・伊藤公雄

[評者]齋藤純一(早大教授)

[掲載]2017年10月22日

[ジャンル]政治

表紙画像

■生き方断念せずにすむ保障こそ

 近代の国家は家族に深く関与してきた。そのことにいまも変わりなく、大多数の国家は異性愛カップルにのみ婚姻資格を与えているし、少子化対策は最重要の政策課題とされている。
 本書は、本年1月に日本学術会議で開催されたシンポジウムをもとに編まれ、家庭教育支援法案、親子断絶防止法案、憲法第24条に関する自民党改定案、そして政府や自治体主導の婚活政策を取り上げ、その問題を検討する。
 本書によれば、いま国家の家族政策がとくに関心をもっているのは、「子ども」をめぐる問題である。国家の成員として望ましい「資質」が備わるよう家庭でどう教育していくか、離婚などで別居した親との面会・交流をいかに促すか、互いに「助け合う」家族規範(ファミリー・バリュー)をどう再構築するか、そして、結婚・出産をいかに奨励し、人口減少に歯止めをかけるか。
 重要なのは、これらの政策が整合しているかどうかである。たとえば、出生率が低迷しているのは、日本や韓国、イタリアやスペインなど育児を女性の役割とする性別分業規範の強い国々であり、伝統的な家族規範の強化が出生率を上昇させるとは考えにくい。また、「官製婚活」を続けても、家庭を築くに足る所得が見込めなければ、その効果は微々たるものにとどまる。未婚・単身でも仕事を続けながら子どもを育てられる生活条件を保障しなければ出生率の回復が望めないことは、フランスなどの例が示している。
 国家が関心を向けるべきは「正常な」家族モデルを示すことではなく、それぞれの生き方を断念しなくてもすむ生活条件を一つひとつ保障することである。貧困や長時間労働などで劣化してきた生活条件の回復に政策は本気で取り組もうとしているだろうか。
 本書は、多様な生き方が必要としている政策とそうではないものとの違いに光を当てる。
    ◇
 ほんだ・ゆき 64年生まれ。東京大大学院教授▽いとう・きみお 51年生まれ。京都産業大客員教授。

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