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大人のための社会科―未来を語るために [著]井手英策・宇野重規・坂井豊貴・松沢裕作

[評者]野矢茂樹(東大教授)

[掲載]2017年10月29日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

■「どこかおかしい」を解き明かす

 「現代社会の基礎知識を教えてくれる本かな」
 「そう思っちゃうよね。表紙しか見てないだろ」
 「いや、目次もちょっとは見たさ。第1章は『GDP』。ちゃんとは分かってないから、教えてもらえるとありがたい」
 「だから、そういう早分かりの本じゃないんだよ」
 「違うの?」
 「いまの社会って、どこかおかしくなってるだろ?ぼくらが感じているその漠然とした違和感の正体を、この本は解き明かそうとしているんだ」
 「目次を見ると、最後の章が『希望』とあるね」
 「そう。それがこの本のポイントだな」
 「未来は明るいぞって教えてくれるの?」
 「いや、そうじゃない。社会科学って、未来を予測してくれるようなイメージがあるけど、この本がめざしているのは将来の日本を予測することじゃない。未来はどうなるか分からない。だけど、私たちはきっとそれをいい方向に変えていける。つらい道かもしれないけれど、変えることができるという信念。これが『希望』だ。
 いまの日本の何が問題なのか、どうしてそういう問題が生じたのかをはっきりさせる。そうして希望をもつための足場を作ろうとしているんだ」
 「なるほど、『GDP』の章も、GDPとは何かを説明するというより、GDPを指標にして社会を評価することの問題点が論じられるわけだ」
 「そう。四人の専門家たちがそれぞれの視点から現代社会の問題を取り上げている。しかもね、読んでいるとひんぱんに他の章が引き合いに出される」
 「どういうこと?」
 「たんに原稿を寄せ集めたんじゃないってことさ。四人が議論を重ねて、お互いの考えを熟知した上で、書かれている」
 「そうか。表紙とタイトルを見ただけじゃ分からないな。読んでみるよ。希望をもつためにも、ね」
    ◇
 いで・えいさく 慶大教授/うの・しげき 東大教授/さかい・とよたか 慶大教授/まつざわ・ゆうさく 慶大准教授

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