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ティンパニストかく語りき [著]近藤高顯

[評者]佐伯一麦 (作家)

[掲載]2017年11月05日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

 中学の時に、私が初めてオーケストラの実演に接した曲が、ティンパニが大活躍するブラームスの交響曲第1番だったためか、縁の下の力持ちでありながら、第2の指揮者とも言われるティンパニの響きには特に耳を傾けるようになった。
 著者は、日本では珍しく本格的なドイツスタイルを学んだティンパニ奏者。ベルリンフィルの首席奏者フォーグラーの演奏に感銘を受けて楽屋口を訪ね、次の来日までドイツ語を必死に学んだ真剣さが通じて弟子入りが叶(かな)い、ベルリンに給費留学する経緯は、青春記としても読み応えがある。
 一流オケの奏者たちや、朝比奈隆、カラヤンなど指揮者たちとの現場での秘話の数々はもちろん、ティンパニは女性名詞であり、バチ作りと革張りという手芸の腕も必要であるなど、興味は尽きない。音のイメージを言葉で伝える機会が多いからか、演奏家には名文章家がいる。実演に親しんできた近藤氏がそこに加わり、心うれしい。

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