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擬 MODOKI―「世」あるいは別様の可能性 [著]松岡正剛

[評者]蜂飼耳(詩人・作家)

[掲載]2017年11月12日

[ジャンル]社会

表紙画像

 編集という行為に、きわめて独特の視点と広がりを与え続けてきた松岡正剛による本書は、ものの見方、とくに日本文化についての柔軟な論から成るエッセイだ。古今東西のさまざまな表現への言及を含みながら自在に積み上げられていく展開は愉(たの)しい。
 世の中を「擬(もどき)」あるいは「別様の可能性(コンティンジェンシー)」として捉え直したいという動機や態度は、既成の概念と線引きの仕方に対する果敢な挑戦にほかならない。
 蕪村の句「凧(いかのぼり)きのふの空のありどころ」に強く惹(ひ)かれてきたという。凧はもうなくて、空だけがある。そこに凧の「面影」を見る。「面影を編集する」という言葉が印象深い。著者のものの捉え方を端的に示す表現だ。本物があって擬物があるのではなく「ほんと」と「つもり」はまじりあっているのだと、著者は論をほぐすように語る。
 この本は、読者に何かを始めさせる力を持っている。好奇心と考察を編み上げていく手つきが魅惑的だ。

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