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消費大陸アジア―巨大市場を読みとく [著]川端基夫

[評者]加藤出 (東短リサーチチーフエコノミスト)

[掲載]2017年11月12日

[ジャンル]経済

表紙画像

■日本企業の苦闘・成功例を分析

 アジアからの観光客でごった返す大阪の黒門市場を先日覗(のぞ)いてみた。彼らの購買力は凄(すさ)まじく、3千〜5千円の寿司(すし)パックが信じられない勢いで売れていた。
 他方で国内の消費市場は今後顕著な縮小を見せる。外食や衣服、自動車、家電などの購入を牽引(けんいん)する年齢層を20〜64歳と仮に見なせば、2000年に7900万人だった同人口は、25年に6700万人、50年に5100万人に減る(国連中位推計)。
 縮む国内市場で苛烈(かれつ)な競争を続けるより、活力ある新中間層がいるアジアに向かう日本企業が急増してきたのは当然といえる。だがいざ進出してみると、文化、宗教、制度、嗜好(しこう)から来る想定外のギャップに悩むケースが多々見られる。
 その点で、日本企業の苦闘例、成功例を体系立てて分析した本書は極めて貴重だ。「日本企業の海外市場での経験を『意味づけの次元』から捉え直して紹介しつつ、消費市場の解読法を検討した本書は、これまでにない立ち位置をとるもの」と著者は主張する。
 本書を読み進むと、同じモノ、サービスでありながら国境を越えると消費者の受け止め方はこんなにも異なるのかと衝撃を受ける。
 例えば、なぜ海外ではラーメンの「替え玉」(麺のお替わり)無料は訴求力がないのか、なぜ中国ではラーメンの豚骨味は大人気だが醤油(しょうゆ)味はだめなのか、なぜ吉野家のカウンターは海外では評判が悪かったのか、といった「目からウロコ」的話題が続々登場する。
 また、インドネシアで不振だったポカリスエットが、ラマダン(断食月)後の脱水症状に効くとの評判で一気に2億人のイスラム教徒を市場に取り込めた例も著者が言う「意味次元の適応化」につながっている。
 高度成長期後の日本の消費が多様化・細分化したように、アジアでもそれが起き始めている。彼らの嗜好を今後も捉えていくには本書の分析アプローチが一層大事になっていくだろう。
    ◇
 かわばた・もとお 56年生まれ。関西学院大商学部教授(国際流通論)。著書に『アジア市場を拓く』など。

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