書評・最新書評

異次元緩和の終焉―金融緩和政策からの出口はあるのか [著]野口悠紀雄

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2017年12月03日

[ジャンル]経済

表紙画像

■噴火の時待つ巨額損失のマグマ

 本書は、日銀の量的緩和政策になお期待をかけるすべての関係者への警告だ。量的緩和政策が経済を何とか持たせているように見えている間にも、矛盾はマグマのように溜(た)まり、噴火の時を待っているのだ。
 まず著者は、量的緩和政策を徹底批判する。この政策の開始以降、日銀はいまだ物価目標を達成できていない。緩和マネーは投資や消費に向かわず、企業の内部留保として積み上がっている。株式などの資産購入は株価上昇を通じて富裕層の資産価値を引き上げ、格差拡大をもたらしている。
 仮に日銀が物価目標を実現しても、この政策からの脱却の際に、日銀に巨額損失が生じうる。なぜか。緩和の終了は、金利上昇をもたらす。これが、日銀に重い金利負担をもたらすのだ。日銀が金融機関から国債を購入する際には代金が、彼らが日銀内にもつ口座に振り込まれる。日銀はその残高に利子を付けねばならない。金利上昇でこの支払利子が、日銀の保有する国債の金利収入を上回るため、「逆ザヤ」が発生する。加えて日銀は、市場で巨額の国債購入を続けるため、額面より高い価格で購入している。国債の償還時には額面通りの金額しか戻らないため、ここでも損失が発生する。
 著者の試算では、日銀の自己資本約7・6兆円に対し、これらの損失合計はなんと約45兆円にも上り、日銀は債務超過に転落する可能性が高いという。問題は日銀に留(とど)まらない。極めつきは、財政破綻(はたん)だ。金利上昇のため、いまは抑えられている国債利払い費が急増。著者のシミュレーションによれば、2023年度にも「利払い費+元本償還費」で予算の半分に達し、事実上の財政破綻となる。
 著者は、深手を負わない早期の退却を推すが、日銀は議論を避けている。日銀が真に独立性と透明性を有するなら、自らの政策がもたらす巨大なリスクについて、市場や国民との対話を始めるべきだろう。
     ◇
 のぐち・ゆきお 40年生まれ。一橋大名誉教授(ファイナンス理論、日本経済論)。『金融政策の死』など。

関連記事

ページトップへ戻る