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学童集団疎開―受入れ地域から考える [著]一條三子

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2017年12月03日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

 「学童疎開促進要綱」が閣議決定されたのは1944年6月、縁故疎開を原則としつつ帝都の児童(3年生以上)は集団疎開させる内容だ。もともと消極的な軍部もサイパン陥落で本土空襲が想定されるとそうは言っておられなくなった。
 埼玉県の公立高校で教鞭(きょうべん)をとった著者は疎開を受け入れた町村の実態を調べあげ、国策として学童疎開の決定に至る過程と内容を体系だって分析している。受け入れ先の自治体研究は少なかったが、著者の目はその部分に向いている。受け入れた地方の児童は健康であるにせよ、都会の子と違って受験勉強とは一線を引く。双方にある困惑、不安が正直に描写されている。
 疎開の歴史的背景に1940年の「国土計画設定要綱」があり、都市住民を不健全、農民は健全と分ける国家の思想があったとの指摘、著者自身が作成した全国規模の疎開に関するリストなど、この方面の研究の先導役も果たしている。

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