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日本神話はいかに描かれてきたか―近代国家が求めたイメージ [著]及川智早

[評者]蜂飼耳(詩人・作家)

[掲載]2017年12月03日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

 『古事記』『日本書紀』などの日本神話や古代説話が、近代においてどのように受容されたかを、雑誌の口絵・挿絵、絵葉書や双六(すごろく)、薬の包み紙などに見られる図像の数々から探る。
 研究史的には不毛とされてきた戦前期。しかし、図像を中心とした受容史の視座から考えるなら、文字に書かれていない事柄へ向かう逸脱や変容が、興味深いかたちで出現していると著者は考察を重ねていく。
 たとえば「イナバのシロウサギ」。そこに登場するワニは爬虫(はちゅう)類か魚類かという、従来さまざまに議論されてきた点について、著者は「曖昧(あいまい)さを有する語」のワニを一種に限定する方向付けそのものに、近代的合理主義の視点を見る。
 文献に髪型の記述のない神武天皇が、図像化される際になぜ「みづら」という髪型にされたのかなど、近代が求めた理屈を手掛かりに論じられる。文字が語らず、絵だけが語る解釈や出来事があるのだ。本書は、受容史の可能性を伝える。

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