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日銀と政治―暗闘の20年史 [著]鯨岡仁

[評者]加藤出 (東短リサーチチーフエコノミスト)

[掲載]2017年12月10日

[ジャンル]政治 経済

表紙画像

■金融政策を歴史的な視座で問う

 本書は、1998年の日銀法改正から、現在のアベノミクス下の超金融緩和策に至る政治と日銀の関係の「舞台裏」を、緻密(ちみつ)な取材を基に記述したものである。
 安倍晋三首相が、小泉政権の官房長官時代から日銀に不信感を強めてきた経緯や、現在の日銀総裁・副総裁人事の内幕など、生々しい話が盛り込まれている。
 来年は新日銀法施行20周年にあたる。この法改正の意義は何だったかを、このタイミングで振り返る本書のコンセプトは、非常に価値あるものと思われる。
 というのも、法改正の主要テーマは日銀の独立性強化にあったからである。戦時下に制定された旧法は、戦費調達安定化のために日銀を政府の「打ち出の小槌(こづち)」にするものだった。
 一方で、現在の日銀は、デフレ脱却を大義名分としつつも、国債を猛烈に買い取ってその発行金利をゼロ%またはマイナスに押し下げ、政府の財政再建先送りを事実上強くサポートしている。
 評者は最近、金融市場関係者から、「日銀の独立性はこの20年でかえって低下したのではないか?」との皮肉な指摘をよく聞く。日銀の国債保有額が激増する一方で、最近の黒田総裁は政府の財政運営に苦言を呈さなくなっているからだ。
 本書を読んで痛感させられたのは、米欧と異なり日本には中央銀行が過度な金融緩和策を行った場合、それを抑える政治勢力が議会に存在しない点である。最近の日本経済は好調だが、最大の原因は海外経済の好転にある。日銀がこんなにも金融緩和をしているのにインフレ率は政府と定めた目標に近づかないため、出口は全く見えてこない。
 著者は「仮に、いまの金融政策が将来、重大な問題を引き起こしたとき、その責任は誰にあるのか? 本書が、その歴史的な視座を提供できれば、幸いだと思っている」と述べている。将来振り返ったとき、本書は重要な“歴史的証言”となる可能性があるだろう。
    ◇
 くじらおか・ひとし 76年生まれ。朝日新聞記者。『ドキュメントTPP交渉 アジア経済覇権の行方』など。

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