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佐伯一麦 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2017年12月24日

表紙画像

(1)カストロの尻(金井美恵子著、新潮社・2160円)
(2)ゆらぐ玉の緒(古井由吉著、新潮社・1836円)
(3)最後のヴァイキング ローアル・アムンセンの生涯(スティーブン・R・バウン著、小林政子訳、国書刊行会・3780円)
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 書評した以外の本から。(1)19歳でのデビューから50年を迎えた作家によるエッセー、小説を横断した散文の魅力が心ゆくまで味わえるとともに、初めて金井文学に触れる読者にもうってつけの一冊。男性視点の及ばない事柄への批評も鋭い。(2)季節の折々に、仕事場の窓から外を窺(うかが)い、その日の空模様と、あるかなきかの風に樹木の細い枝先がふるえているのを目にするとき、古井氏の小説を思う。書名にあるように、古歌からの連想にも心がはこばれる。(3)人類で初めて南極点に到達しながら、ライバルだったイギリスのスコットに比べて冷たく扱われることもあった冒険家アムンセンの名誉回復を図った書。日本語で初めて知らされる事柄や、探検はノルウェーの独立とも関わったなど示唆に富む。
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 新刊書を読む習慣はなかったので、新刊の山を前にくらくらし通しだった。路線バスの旅の小説をのろのろと連載中。

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