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椹木野衣 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2017年12月24日

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(1)丹野智文 笑顔で生きる 認知症とともに(丹野智文著、文・構成=奥野修司、文芸春秋・1566円)
(2)日航123便 墜落の新事実(青山透子著、河出書房新社・1728円)
(3)テトリス・エフェクト(ダン・アッカーマン著、小林啓倫訳、白揚社・2484円)
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 未書評の本から、年末年始に手にしてほしい3冊。いずれも記憶の風化に抗(あらが)う。(1)はトップ営業マンであった著者が、39歳で若年性アルツハイマー病となり直前の記憶さえ失うなか、病との共生を選ぶ道を描く。みずからは書けない当事者と文・構成者との協働に新しい本のかたちを見た。(2)は今年迎えた三十三回忌を機に、520名もの犠牲者を出した日航機事故を新たな視点から再検証する。東電の原発があってはならない放射能漏れを起こし、国や科学への信頼が揺らぎ、昨今も大企業による偽装や隠蔽(いんぺい)が相次ぐなか、改めて見直されてよい。(3)は過ぎゆくロシア革命百年から。世界を席巻したテトリスというゲームの誕生と普及の背後に、消え行く超大国の渦中でこんな攻防があったとは。
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 3・11から6年半、すべてを押し流した惨禍のあとで表現は可能か。私なりの回答『震美術論』(美術出版社)をようやく出せた。

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