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蜂飼耳 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2017年12月24日

表紙画像

(1)メシュガー(アイザック・B・シンガー著、大崎ふみ子訳、吉夏社・2808円)
(2)冬の日誌(ポール・オースター著、柴田元幸訳、新潮社・2052円)
(3)カシス川(荻野アンナ著、文芸春秋・1620円)
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 反応としてのスピード感を持つ言葉も現代では大事だが、じっくり向き合うことのできる言葉や文章を読みたい。そういう気持ちはむしろ増している。
 (1)は第2次世界大戦後のニューヨークを舞台とする小説。極限状況で生きるために行った行為を、他人が裁けるかどうか、赦(ゆる)し、寛容、受容とは何か、ものを書くとはどういう営為かなど、答えを出しがたい問い掛けに満ちた傑作。
 (2)は同じ著者の『内面からの報告書』と対になる自伝的小説。身体と感覚を基底として綴(つづ)られる。掘り下げ方の強さに打たれる。
 (3)は母と娘の関係の難しさを、闘病や介護などを通して描く小説。ユーモアがあり、すがすがしい。信頼できる文章だ。そこから、言葉を読む歓(よろこ)びがもたらされる。
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 8月は富山・高志の国文学館、10月は札幌・北海道立文学館へ。こうした施設は各地で独自の役目を担っていると再認識する。

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