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AIが変えるクルマの未来―自動車産業への警鐘と期待 [著]中村吉明/モビリティー進化論―自動運転と交通サービス、変えるのは誰か [著]アーサー・ディ・リトル・ジャパン

[評者]加藤出 (東短リサーチチーフエコノミスト)

[掲載]2018年02月11日

[ジャンル]経済

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■技術の進展受け貴重な問題提起

 自動運転、電気自動車、シェアリング(共有)サービス等、自動車業界は大変革期にある。海外に行くとそれを前提とした自由闊達(かったつ)な議論を多々耳にする。
 例えば、米国の大都市近郊のある町は、駅の駐車場不足対策としてライドシェア(Uber〈ウーバー〉等)で来る住民に補助金を出す試みを実施した。駐車場を税金で今増設しても、自動運転等々で車の所有・利用形態が激変したら無駄になるからだ。
 技術の進展を前向きに取り込むそういった柔軟な発想は日本ではあまり聞かれない。自動車はこの国を支えてきた基幹産業だけに、むしろ変化を警戒する空気の方が強いように感じられる。その点、この2冊は貴重な問題提起を行っている。
 『AIが変えるクルマの未来』は、自動車産業を取り巻く第4次産業革命を入門書的に鳥瞰(ちょうかん)しながら、日本企業、政府が採るべき戦略を提唱している。電池や電子部品で優位性を持つ日本企業はあるが、全体としては「日本の自動車産業は危機の真っただ中にある」と著者は奮起を促している。
 『モビリティー進化論』は、自動運転車の予想販売価格や自動車需要の減少見込み等、興味深い推計を示しつつ、次世代の交通サービスの青写真を見せてくれる。そして、どこよりも自動運転や新しい交通サービスを必要としているのは実は日本だと指摘する。高齢化に伴う運転免許返納や過疎化によって交通弱者が増大する一方、人口減少で公共交通機関や運送業の働き手が不足するからだ。
 しかし、新技術に関する環境整備において日本には保守的な傾向が見られる。
 『AI…』は第1次産業革命時の英国の「赤旗法」を教訓として載せている。同法は、自動車を走らせる際は赤旗を持った人が55メートル先を必ず先導して歩くという悪法だった。走行速度を抑えて馬車運送業者らを利する規制だったが、これにより英自動車産業はドイツに後れをとった。この二の舞いは避ける必要がある。
    ◇
 『AI…』なかむら・よしあき 専修大教授▽『モビリティー…』A・D・リトル博士が設立した組織の日本法人。

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