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復興の空間経済学―人口減少時代の地域再生 [著]藤田昌久、浜口伸明、亀山嘉大

[評者]石川尚文(本社論説委員)

[掲載]2018年04月14日

[ジャンル]経済

表紙画像

■人や産業の集積・分散で考える

 「津浪(つなみ)後の復興は目覚ましく、たちどころに失われた戸数、人口の満たされてしまう状態にある」
 本書の導入部には、こんな引用がある。1933年に起きた昭和三陸地震の10年後に、地理学者が書いた本の一節という。私たちが東日本大震災後に見てきた光景とは、随分違う。
 本書はこの対照をもたらした要素として、人口の動き——被災地域だけでなく、日本全体の人口の増減や分布の変化に着目する。
 かつての津波被害のときは、日本の人口は増え続けており、豊かな漁場といった資源の希少性は高まる一方だった。それゆえ「三陸沿岸部には、復興を自然に成し遂げる条件があった」
 では、日本全体が人口減少に転じたいま、復興のあり方はどのような影響を受けるのか。何に注意すべきなのか。本書は、「空間経済学」を用いて、その分析を試みている。
 空間経済学は、都市や産業の集積がどのように生まれるのか、といった「地理的空間における経済学の一般理論を目指す」分野とされる。共著者の一人、藤田昌久は、この領域を切り開いてきた第一人者だ。
 極めて抽象度の高い理論が、被災地の複雑な現状にどこまで適用できるのか。ハードルの高いテーマを前に、論の運びがやや錯綜(さくそう)している印象も受ける。
 だが、人や産業を吸引する「集積力」と、反対に流出を招く「分散力」による論点の整理や、人口が増えるときと減るときの都市の盛衰は、単純に逆の過程をたどるわけではないといった指摘は、腑(ふ)に落ちるところが多い。現状の厳しさを描きつつも、理論的にあり得る復興の糸口を探る視点も貫かれている。
 被災地はもちろん、人口減少が加速する地域社会の課題については膨大な議論があり、その重さに圧倒されることもある。そこに分け入るための「見取り図」を与えるものとして、本書のような試みがさらに進展することを期待したい。
    ◇
 ふじた・まさひさ 甲南大特別客員教授▽はまぐち・のぶあき 神戸大教授▽かめやま・よしひろ 佐賀大教授。

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