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沖縄 憲法なき戦後―講和条約三条と日本の安全保障 [著]古関彰一、豊下楢彦

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2018年04月28日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■現在に至る幾つもの誤謬えぐる

 戦後日本の憲法体制から外されていた沖縄県民、沖縄返還に至る国内政治、そして現在の沖縄問題への政府の対応など、本書は1945年8月の日本敗戦、連合国による占領支配からの時間的経過を辿(たど)り、その問題点を丹念にえぐりだす。
 改めてこの俯瞰図(ふかんず)は、太平洋戦争、東西冷戦の結果としての準戦時体制ではないかと気づかされる。
 47年9月の昭和天皇の「沖縄メッセージ」。御用掛の寺崎英成がGHQ(連合国軍総司令部)側に伝えたのだが、天皇が「米国が沖縄の軍事占領を継続することを希望」との内容である。米国の利益になり、日本を保護することにもなるというのだ。これが米国の沖縄政策決定に影響を与えた事実。対日講和条約の第三条(日本は沖縄などを米国の信託統治にすることに同意するとの内容)は「日本に潜在主権を残しつつ、米国を施政権者とする」。これが、米国務長官顧問ダレスの演説の戦略的思惑であった。この第三条をめぐる日本政府の答弁は常に曖昧(あいまい)で、日本側はほとんど米国の言いなりだと感じられてくる。
 とくに興味をひくのは、日本政府はいかなる「根拠」で沖縄返還を求めたかの検証である。というのは昭和30年代には池田勇人首相がケネディ大統領に「返還を求める意図は全くない」と述べていたからだ。結局、佐藤栄作首相がジョンソン大統領に求めたのは、〈沖縄住民と日本国民の「強い願望」であり、これに米国が応えてくれること〉であった。これは講和条約時の吉田茂首相発言と同じだが、この「強い願望」の本質を問い直さなければと著者たちは指摘する。
 その本質とは、本書によると沖縄県民90万人が憲法も国籍もなく、外国軍により植民地同様の状況で長期に支配され続けたという現実である。現政権に至る道筋の中に幾つもの誤謬(ごびゅう)があり、それが県民を「核の島」に閉じこめているとの見方に考えさせられる。
    ◇
 こせき・しょういち 独協大名誉教授(憲政史)▽とよした・ならひこ 元関西学院大教授(外交史)。

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