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問題だらけの女性たち [著]ジャッキー・フレミング 「女子」という呪い [著]雨宮処凛

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)

[掲載]2018年05月05日

[ジャンル]人文

表紙画像

■笑って過去に引導、現代にエール

 土俵に女性を上がらせないのは伝統文化だと開き直る相撲協会。前次官のセクハラ行為をなかなか認めなかった財務省。
 ムカついていた矢先に、この本を開いたら……。
 〈かつて世界には女性が存在していませんでした。/だから歴史の授業で/女性の偉人について習わないのです。/男性は存在し、その多くが天才でした〉
 えっ、どういう意味よ。おそるおそる先を読み進むと……。
 〈天才たちは、/著名な男性のリストをつくりました。/それによって、女性の知能がちっぽけで/あることが証明されました〉
 キーッ、こんな本、ゴミ箱行きだわ。いやいや、早まってはいけない。これはそういう本じゃないんです。著者のジャッキー・フレミングはれっきとしたフェミニスト。『問題だらけの女性たち』は19世紀イギリスの女たちがどれほど非科学的な迷信に苦しめられたか、逆にいうと当時の男たちがどれほどトンチキな言説をまきちらかしたかをイラストにして、笑ってやろうという本なのだ。
 並みいる天才たちが残した言葉はそれはもうご立派だ。
 〈娘たちには人生の初期に/挫折させてやる必要がある〉とおっしゃったのは18世紀の思想家ルソー。〈そうすれば、男性を喜ばせるという女性の自然な/役割がより自然にできるようになる〉そうで。〈女性は芸術やほかのいかなる分野においても、/真に優れた、独創的な偉業を/成し遂げることができない〉はショーペンハウアー、〈女性がボールを投げようとしている姿は/見るも無残〉はクーベルタン男爵のご高説。ダーウィンもフロイトもピカソも、こんな調子で、みな形無しだ。
 しかし、トンチキな言説は絶滅したか。雨宮処凛『「女子」という呪い』には21世紀の日本における〈男社会のあまりの「変わらなさ」に、心が折れそうになる瞬間〉や〈昭和に強制的にタイムスリップさせられたような感覚にめまいがして倒れそうになった〉話が満載だ。
 25歳で文筆家デビューするまで、雨宮さんはキャバクラに勤めていた。デビュー後はセクハラを撃退するロリータファッションで武装した。女性を縛る〈「男を立てなきゃいけない」問題、「バカなふりをしなくちゃいけない」問題、「知ってるのに知らないふりしなくちゃいけない」問題〉は〈女性の知能がちっぽけであることが証明されました〉の時代と一直線につながっている。
 『問題だらけの女性たち』が過去の亡霊に引導を渡す本なら、こちらは現代の女性にエールを送る本。合言葉は、#MeToo、#WithYou、そして「さらば、オッサンの呪い」だね。
    ◇
 Fleming 英国在住の漫画家、イラストレーター。▽あまみや・かりん 75年生まれ。作家、活動家。著書に『一億総貧困時代』など。

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