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絶滅危惧の地味な虫たち―失われる自然を求めて [著]小松貴

[評者]石川尚文(本社論説委員)

[掲載]2018年05月05日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

 すごみのある本だ。
 環境省のレッドリストに載る虫たちを紹介しているのだが、「より小さく、より目立たなく、より知られていないものを前面に」。
 それが本書の「理念」だという。環境保護を訴えるときに、チョウやトンボ、クワガタなど優美で大きな種ばかりが取り上げられる「人間ごときの色眼鏡」への義憤が強烈ににじむ。
 地下、それも水脈の近くにしかすまないメクラチビゴミムシの仲間。かつて水たまりに普通にいたコガムシ。血を吸いマラリアを媒介するハマダラカの種……。登場するのは日本各地に生息する約80種。「地味」とはいえ、虫たちの姿形や生態は、生息環境の特徴にあわせて変化に富む。現地を歩いた筆者の観察に基づいて描き出される生き様は、それぞれに魅力的だ。
 ひっそりと滅びゆく小さな存在。虫の視線ですくいとられたその重みが、我々の身近な環境での「多様性」の危機を浮かび上がらせている。

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