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植物は〈未来〉を知っている―9つの能力から芽生えるテクノロジー革命 [著]ステファノ・マンクーゾ

[評者]宮田珠己(エッセイスト)

[掲載]2018年05月12日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■なぜ擬態できる、なぜ動ける?

 南米のボキラという蔓(つる)植物は、近くに生えている植物に擬態する能力がある。葉の大きさや形、色まで何度でも変えられるというから驚きだ。なぜそんなことが可能なのか、その仕組みはまだ解明されていない。植物には視覚があると考える研究者もいるそうだ。
 考えてみると、オジギソウが触れられると葉を閉じたり、ハエトリグサが蠅(はえ)を閉じ込めるのもふしぎな話だ。筋肉もないのに動くのだから。松かさは死んだ組織であるにもかかわらず乾燥すると開き、オランダフウロの種子は弾(はじ)ける。植物は最小限の、もしくはエネルギーゼロの状態でいかに動くかという点で動物の先をいっている。
 本書の主張は、このような植物の持つ多様な能力を研究することで、テクノロジー革命への道を開こうというものである。
 植物の構造がインターネットに似ていることはよく言われてきた。移動できない植物にとって、脳や臓器の存在は弱点になるため、機能を全身に分散させ、互いに協力する形をとる。指令センターのないシステムがさまざまな問題をどう解決するのか。そういう点でも植物はヒントを与えてくれると著者は語る。
 近年は、高濃度の塩分に耐性を持つ植物の研究も始まっている。もし海辺や塩分濃度が高い土地で植物を栽培することができれば、増え続ける人類の食糧問題に大きく寄与するはずだ。
 また著者考案の《プラントイド》(植物型ロボット)が面白い。汚染地帯や火星など人間の踏み込めない場所にばら撒(ま)くと、その場で自らエネルギーを調達し、土中に根を張りめぐらせて、さまざまな観測データを送ってくるのだ。
 他にも海水を淡水化し太陽光で野菜を育てる海上の温室、宇宙旅行における酸素の供給、二酸化炭素の除去と食料兼癒やしの存在としての利用など。まさに植物の力を引き出すことで未来は変えられる、そう思わせてくれる希望の書だ。
    ◇
 Stefano Mancuso イタリア・フィレンツェ大学教授。著書に『植物は〈知性〉をもっている』など。

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