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辺境中国―新疆、チベット、雲南、東北部を行く [著]デイヴィッド・アイマー

[評者]出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)

[掲載]2018年05月12日

[ジャンル]歴史 社会

表紙画像

 広大な中国には公式に認められた55の少数民族が主に国境地帯で暮らしている。「山高く、皇帝遠し」ということわざがあるが、北京の意向はどの程度辺境に届いているのだろうか。本書は、英国のジャーナリストが新疆、チベット、雲南、東北部を旅し国境の向こう側にまで足を延ばして、漢族と少数民族の辺境の生活の実相を克明に描いた渾身(こんしん)のルポルタージュである。
 どの辺境も想像を絶する過酷な環境下にあるが雲南には度肝を抜かれた。著者は越境して、持ちつ持たれつの関係にあるミャンマーのワ州に入る。麻薬密造地帯として知られる「黄金の三角地帯」の中でも最も治安の悪い地域だ。その中心がヘロインとヤーバー(タイ語で「狂人の薬」の意)、少年兵とカジノと売春婦、子供の売買と宮殿のような豪邸が共存する町パンサンだ。著者の強靱(きょうじん)な体力と不屈の精神力に脱帽した。実体験でしか語り得ない迫真の物語がここにある。

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