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歌川広重の声を聴く―風景への眼差しと願い [著]阿部美香

[評者]山室恭子(東工大教授)

[掲載]2018年05月12日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

 もしも〜し、わしじゃ、ウキウキ絵師の広重じゃ。御本をありがとうね。
 あはは、たまげたよ。よくこんなに調べなさった。わしが描いた場所をこつこつ地図の上に置いて、隅田川沿いと海辺が、とりわけお気に入りでしたね、と。まいったまいった。江戸中くまなく歩いたのに、好みは出るんじゃなあ。
 『絵本江戸土産』に着目したのは、うまかったよ。わしが絵と文章の両方を担当しておるから、絵の意図を探る手がかりを得やすいものな。で、「耕地」好みが新しいと気づいた、と。ふむ、たしかに農夫が広野を耕すさまに風流を感じたものじゃが、それは先人にない感覚であったか。
 そうさなあ。生涯に4376作(と御本にあったな)、舟を曳(ひ)く村人や、立ち並ぶ白壁の蔵や、暮らしを支える風物を好んで描いたかもしれんのう。
 絵は世相の鏡。そちらでは今、どんな絵がみなをウキウキさせとるかの。こんど送ってくだされや。

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