苅部直(東京大学教授)の書評

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苅部直 (東京大学教授)
1965年東京都生まれ。東京大学教授。専門は日本政治思想史。著書に『光の領国―和辻哲郎』『丸山眞男―リベラリストの肖像』(サントリー学芸賞)『移りゆく「教養」』『鏡の中の薄明』(毎日書評賞)『歴史という皮膚』、共著に『日本思想史ハンドブック』など。

ハンナ・アレントの政治理論―ハンナ・アレントと現代思想 アレント論集1・2 [著]川崎修

ハンナ・アレントの政治理論―ハンナ・アレントと現代思想 アレント論集1・2 [著]川崎修

■「危うさ」から目をそらさず考える  二十世紀の政治哲学者、ハンナ・アレント(最近多くなった発音表記では「アーレント」)についての研究書・概説書や、遺稿の訳書が、日本でも近年さかんに公刊されている。かつてはフランス現代………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2010年03月28日
[ジャンル]政治 人文

クリティカル・モーメント―歴史の中での批評のありよう検証 [著]高田康成 

クリティカル・モーメント―歴史の中での批評のありよう検証 [著]高田康成 

 表題にある「クリティカル」は、「批評」そして「臨界」という意味につらなる形容詞である。著者によれば「批評」とは、西洋の近代に特有の、知の営みにほかならない。  神の啓示という根拠が見失われた時代に人間は、みずからの知………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2010年03月21日
[ジャンル]人文

漱石の『猫』とニーチェ―稀代(きだい)の哲学者に震撼(しんかん)した近代日本の知性たち [著]杉田弘子

漱石の『猫』とニーチェ―稀代(きだい)の哲学者に震撼(しんかん)した近代日本の知性たち [著]杉田弘子

■ニーチェ軸に近代日本の精神史  岩波文庫から、多くの著書が翻訳刊行されている哲学者を挙げると、まずプラトン、ルソー、カントが並ぶ。いかにも教養主義と感じるが、それに次いで多い部類の一人が、何とニーチェである。戦前の刊………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2010年02月28日
[ジャンル]文芸 人文

宋学の西遷―近代啓蒙への道 [著]井川義次 

宋学の西遷―近代啓蒙への道 [著]井川義次 

■思想の東西交渉史、理論細部まで  十七世紀後半の中国に滞在したイエズス会の宣教師、フィリップ・クプレは、儒学の思想を解説し、経典の翻訳を載せたラテン語の著書を刊行している。この新著で井川義次が扱う書物の一つであるが、………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2010年02月21日
[ジャンル]歴史 人文

フランケンシュタイン・コンプレックス/人間になるための芸術と技術 [著]小野俊太郎

フランケンシュタイン・コンプレックス/人間になるための芸術と技術 [著]小野俊太郎

■怪物生む技術と人文学の想像力  英文学から出発して、多彩な活動をくりひろげている文芸評論家、小野俊太郎の本が二点、ほぼ同時に出た。隠れファン(?)としては喜ばしいかぎりである。  一方はメアリー・シェリーの『フランケ………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2010年01月31日
[ジャンル]人文

ニセドイツ 1・2 [著]伸井太一

ニセドイツ 1・2 [著]伸井太一

■統制下でも膨らむ消費の欲望  もしもこの本の題名を読まずに、中身をたまたま覗(のぞ)いたとしたら、奇妙な商品カタログと思ってしまうかもしれない。第一巻は自動車やテレビなどの工業製品、第二巻は日常生活品の写真がずらりと………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2010年01月10日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能

北畠親房-大日本は神国なり [著]岡野友彦 

北畠親房-大日本は神国なり [著]岡野友彦 

■君主政治再建めざしたリアリスト  宮中の奥深くにはべり、詩歌管弦の遊びにうち興じる。中世の貴族を、そんなありふれた人物像でとらえるなら、およそ北畠親房ほど、そこから遠い人生を歩んだ公家はいない。  名門の村上源氏の一………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2009年12月13日
[ジャンル]歴史

検閲と文学-1920年代の攻防 [著]紅野謙介 

検閲と文学-1920年代の攻防 [著]紅野謙介 

■果敢に抵抗試みた人々を活写  報道機関による表現の自主規制は今でもしばしば問題になるが、この本によれば、大正時代の日本もまた、自主規制の花盛り(?)であった。  もちろん当時は、言論を取り締まる法令がある。だが実際の………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2009年12月06日
[ジャンル]歴史 文芸 政治

まずいスープ [著]戌井昭人 

まずいスープ [著]戌井昭人 

■人生の鉄路から外れてもなお家族  表紙を白黒写真でしかお見せできないのが残念。アーティスト、束芋による不思議な蛸(たこ)の絵に、黄色がかぶさって、まさしく「まずいスープ」の風味をただよわせている。  日常、普通、堅気………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2009年11月22日
[ジャンル]文芸

背徳のクラシック・ガイド [著]鈴木淳史 

背徳のクラシック・ガイド [著]鈴木淳史 

■ギャグも織り交ぜ、快速批評  この本が、あるヴァイオリニストによるバッハの演奏を評した言葉。「気持ちの入りようは半端ではない。濁る和音。外れる音程。何も恐れることはない、といわんばかりにゴリゴリ押しまくる。圧巻」  ………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2009年11月01日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能 新書

リバタリアニズムの人間観 [著]吉永圭 

リバタリアニズムの人間観 [著]吉永圭 

■自由な秩序を教養から考える  教養崩壊とよく言われるが、その教養とは、何を意味するのか。とりあえず今では、論者によってさまざまであろう。  しかしかつて大正時代には、ドイツ語のビルドゥングの訳語という、明らかな由来を………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2009年10月25日
[ジャンル]教育 人文

憲法の境界 [著]長谷部恭男 

憲法の境界 [著]長谷部恭男 

■道徳の思考に訴える“窓口”として  憲法学者による論文集で、版元も新興の学術出版社であるが、本文と注でとりあげている人名に、まずびっくりする。カール・シュミットや樋口陽一など、高名な法学者は当たり前としても、政治哲学………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2009年10月18日
[ジャンル]社会

北一輝―国家と進化 [著]嘉戸一将

北一輝―国家と進化 [著]嘉戸一将

■国家理論と二・二六つなぐ考察    国家とは何か。現実にこの国で、自分たちが政府の命令に従っているのは、どういう根拠に基づくのか。過去も現代もくりかえされる、思想の主題である。  帝国憲法を戴(いただ)く近代の日本国………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2009年09月27日
[ジャンル]政治 人文

政治の精神 [著]佐々木毅/戦後精神の政治学 [著]丸山眞男ほか

政治の精神 [著]佐々木毅/戦後精神の政治学 [著]丸山眞男ほか

■営みに必要なもの、いまこそ考える時  「政治」と「精神」との結びつき。練達の政治学者がそれぞれに著したこの二冊は、ともにそのことを表題で示している。  およそ政治など、実力本位の汚れた世界にすぎない。世の隅々からもち………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2009年09月13日
[ジャンル]歴史 政治 人文

吉田松陰の思想と行動 幕末日本における自他認識の転回 [著]桐原健真

吉田松陰の思想と行動 幕末日本における自他認識の転回 [著]桐原健真

■開かれた国際秩序像を持つ姿提示  吉田松陰は、徳川末期の尊王攘夷(じょうい)運動の主唱者として、また、長州出身の明治の政治家たちの師として、きわめて名高い。だが、そのめまぐるしい実践活動の背後で、松陰が何を考えていた………[もっと読む]

[評者]苅部直(東京大学教授)
[掲載]2009年08月30日
[ジャンル]歴史 人文

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