鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)の書評

写真:鴻巣友季子さん

鴻巣友季子 (翻訳家、エッセイスト)
1963年東京都生まれ。翻訳家、エッセイスト。訳書にジョン・クッツェー『恥辱』、トマス・クック『緋色の記憶』、マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』、ルル・ワン『睡蓮の教室』、ブロンテ新訳『嵐が丘』、著書に『翻訳のココロ』『明治大正翻訳ワンダーランド』など。

オリーヴ・キタリッジの生活 [著]エリザベス・ストラウト

オリーヴ・キタリッジの生活 [著]エリザベス・ストラウト

■ふつうの人々 後半、神業の「化け」  久々にアメリカらしい直球勝負の連作短編集の登場だ。去年の翻訳書のダークホースNo.1。刊行から5カ月、ぐいぐいと評判をあげ読者を広げている。  舞台は米国北東部メイン州の町。多少………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2011年03月27日
[ジャンル]文芸

忘れられた花園<上・下> [著]ケイト・モートン

忘れられた花園<上・下> [著]ケイト・モートン

■古典を本歌取り、語りのモザイク  「秘密」が人間を興味深いものにする。英国南西部の海沿いに立つ壮大な領主の屋敷(マナーハウス)。ここには人知れず壁で囲われた庭園があった——謎めいたゴシック風の舞台に、語りのモザイクを………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2011年03月20日
[ジャンル]文芸

ポリティコン<上・下> [著]桐野夏生

ポリティコン<上・下> [著]桐野夏生

■ヒッピー型ユートピア、残酷な筆  桐野夏生のすごさは、古典的なスタイルを取り入れながら現代と密に切り結んで、既存のジャンルを「えいやっ」と投げ飛ばしてしまうことだ。『東京島』ではロビンソン・クルーソーに始まる「孤島漂………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2011年03月06日
[ジャンル]文芸 社会

オリクスとクレイク [著]マーガレット・アトウッド

オリクスとクレイク [著]マーガレット・アトウッド

■終末世界が問う生命の倫理  生命に関わるパンドラの函(はこ)はすでに開けられたか? 遺伝子操作などは「神の領域」への侵犯か? アトウッドは前者の質問には「イエス」、後者の質問には「オープン・クエスチョン」と答えた。た………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2011年02月20日
[ジャンル]文芸

王のパティシエ―ストレールが語るお菓子の歴史 [著]ピエール・リエナールほか

王のパティシエ―ストレールが語るお菓子の歴史 [著]ピエール・リエナールほか

■古き時代を甦らせるレシピ本  18世紀前半、元ポーランド王の娘マリアの輿入(こしい)れに付いてきたニコラ・ストレールは、ルイ15世のパティシエとなり、やがてパリに菓子店を構える。これが老舗店「ストレール」の始まりだ。………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2011年02月13日
[ジャンル]歴史 文芸

苦役列車 [著]西村賢太

苦役列車 [著]西村賢太

■ダメダメ話、痛みがやがて笑いに  「虫歯を噛(か)みしめるような快感」  という表現をどこかで読んだ覚えがあるが、西村賢太の私小説を読むことは、そんな感覚を想起させる。堪(こら)え性がなく暴力癖があって友達のいない男………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2011年02月06日
[ジャンル]文芸

きことわ/流跡 [著]朝吹真理子

きことわ/流跡 [著]朝吹真理子

■夢と現実溶ける、時間のトンネル  昨年雑誌に掲載された「きことわ」を読み始めてすぐに、際立った才能の出現に慄(おのの)いた。  『きことわ』は、子供のころ葉山の別荘で共に夏をすごした「貴子(きこ)」と「永遠子(とわこ………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2011年01月30日
[ジャンル]文芸

歌うクジラ 上・下 [著]村上龍 

歌うクジラ 上・下 [著]村上龍 

■壮絶な旅が紡ぐ、不老不死の近未来  本書を読みながら「イェーウトゥゴ」という言葉が時折頭をかすめた。西アフリカのある種族は「話をして夜の寂しさから人を解放する」ことをこの一語で表すという。夜の闇は死を、人間のモータリ………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年12月12日
[ジャンル]文芸 アート・ファッション・芸能

ウスケボーイズ―日本ワインの革命児たち [著]河合香織

ウスケボーイズ―日本ワインの革命児たち [著]河合香織

■「本場の教え」脱して得た「思想」  日本のワインは今世紀、劇的においしくなった。それは文字どおり「革命」と呼ぶべき事態だ。ウスケとは伝説的なワイン研究者・麻井宇介。本書は、彼の薫陶を受けた3人の生産者、岡本英史、曽我………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年11月28日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

夏目家順路 [著]朝倉かすみ 

夏目家順路 [著]朝倉かすみ 

■ふつうの男が生きた姿を多角的に  彼は「どこにでもいる男」だ。しかし身内にとっては、かけがえのない人間。そういう当たり前だけど忘れちゃならないことを、照れず、おもねらず、斜に構えず、正攻法で書いた端正な小説である。葬………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年11月07日
[ジャンル]文芸

我的日本語 [著]リービ英雄 

我的日本語 [著]リービ英雄 

■「言葉の杖」は一本ではない  人は誰しも言葉の杖(つえ)を掴(つか)んで生きる——韓国系芥川賞作家の故・李良枝(イヤンジ)はそう書いた。母(国)語と使用言語の間に全く分裂がないことは、世界的に見ればむしろ希有(けう)………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年10月24日
[ジャンル]文芸 人文

沈黙の時代に書くということ―ポスト9・11を生きる作家の選択 [著]サラ・パレツキー

沈黙の時代に書くということ―ポスト9・11を生きる作家の選択 [著]サラ・パレツキー

■「強いが等身大」ヒロインの背景    サラ・パレツキーといえば、日本では1980年代半ばから、しゃれた邦題に、江口寿史のクールな装幀(そうてい)画で刊行された、女探偵V・I・ウォーショースキーのシリーズで名高い。初め………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年10月10日
[ジャンル]文芸

原稿零枚日記 [著]小川洋子 

原稿零枚日記 [著]小川洋子 

■日常するりと異界にする魔術師  なんと胸に突き刺さる題名か。他人の小説のあらすじをまとめる達人にして自分の原稿は遅々として進まない小説家の、日常を綴(つづ)った日記体小説だ。作家が急に書けなくなったり、書けない自分に………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年09月26日
[ジャンル]文芸

おっぱいとトラクター [著]マリーナ・レヴィツカ

おっぱいとトラクター [著]マリーナ・レヴィツカ

■大まじめな論文がユーモア醸す  作者は独の難民キャンプで生まれたウクライナ系英国作家。本書が58歳のデビュー作だ。  最愛の妻をなくした老父の前に、巨乳の若いウクライナ美女が現れ、悩殺された父さんは結婚へまっしぐら!………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年09月19日
[ジャンル]文芸

尼僧とキューピッドの弓 [著]多和田葉子 

尼僧とキューピッドの弓 [著]多和田葉子 

■仕掛けに満ち、キュートさ全開  多和田葉子の小説のなかへ、私は迷子になりにいく。ことばに翻弄(ほんろう)されて方角を見失い、奇妙なものたちに次々と出逢(であ)って、気づいた時には森のはずれにぽんと放りだされている。そ………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年09月12日
[ジャンル]文芸

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