穂村弘(歌人)の書評

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穂村弘 (歌人)
1962年北海道生まれ。歌人。歌集に『シンジケート』『ドライドライアイス』『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』のほか、詩集『求愛瞳孔反射』、評論『短歌の友人』(伊藤整文学賞)、エッセー集『世界音痴』『楽しい一日』(短歌研究賞)『絶叫委員会』など。

サラの柔らかな香車 [著]橋本長道

サラの柔らかな香車 [著]橋本長道

■人生よりも大きなゲーム  将棋小説が好きだ。ゲームのルールもよくわからないのに引き込まれてしまうのは、どうしてなんだろう。  現実の人生の中では、才能とか勝敗といったものは、はっきりとした形では目にみえない。将棋とい………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2012年03月25日
[ジャンル]文芸

女子をこじらせて [著]雨宮まみ

女子をこじらせて [著]雨宮まみ

■イケてない女の悲しみ、炸裂  本書に描かれているのはイケてない人間の生き辛(づら)さ、そして女の生き辛さ、つまり、イケてない女であることの生き辛さだ。珍しいテーマではないと思う。にも拘(かか)わらず、実際に読んでみる………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2012年02月12日
[ジャンル]人文

すべて真夜中の恋人たち [著]川上未映子

すべて真夜中の恋人たち [著]川上未映子

■平凡な世界で「特別」を感じる  恋愛小説である。いや、恋愛未満小説かもしれない。地味な主人公と地味な相手。事件らしい事件は起こらない。だが、その平凡さの中に特別な何かを感じる。  〈わたしはひどく落ちこみ、何かをやっ………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年12月11日
[ジャンル]文芸

句集 残像 [著]山口優夢

句集 残像 [著]山口優夢

■我々は「本体」を見ているのか  山口優夢の第一句集である。  〈あぢさゐはすべて残像ではないか〉  紫陽花(あじさい)に特有の色と形が「残像」と表現されていて、なるほどと思わされる。「あぢさゐ」という旧仮名表記もどこ………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年10月30日
[ジャンル]文芸

東京ロンダリング [著]原田ひ香

東京ロンダリング [著]原田ひ香

■都会の「隙間」に生まれた職業  事故や事件で人が死んだ部屋に一カ月間だけ住む、というのが主人公りさ子の仕事である。賃貸物件の場合、問題の部屋に一度誰かが入居すれば、それ以降の入居者には事情を説明する義務がなくなるらし………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年10月02日
[ジャンル]文芸

歌集 蝉声 [著]河野裕子

歌集 蝉声 [著]河野裕子

■〈私〉自身の肉体を離れた眼差し  『蝉声』の読みは「せんせい」。昨年亡くなった河野裕子の遺歌集である。 〈髪も眉もまつげも脱けますよ それぢやあ私は何になるのか〉  抗癌剤(こうがんざい)の副作用を説明されたときの短………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年08月28日
[ジャンル]文芸

東京難民 [著]福澤徹三

東京難民 [著]福澤徹三

■転落する若者、抜けぬふわふわ感  普通の生活を送っていた平凡な主人公が、ちょっとしたきっかけで、人生のどん底まで転がり落ちてゆく。そんな物語を読むのが好きだ。些細(ささい)な判断ミスや妙な見栄(みえ)や小さな嘘(うそ………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年08月07日
[ジャンル]文芸

たんぽるぽる [著]雪舟えま

たんぽるぽる [著]雪舟えま

■神様の囁き声をとらえる感性  〈ふと「死ね」と聞こえたようで聞きかえすおやすみなさいの電話の中に〉  こんな短歌に、どきっとする。「死ね」はきっと錯覚だろう。聞き返しても、戻ってくるのは優しい言葉だけ。でも、何となく………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年06月26日
[ジャンル]文芸

円卓 [著]西加奈子

円卓 [著]西加奈子

■大人にはない固まりかけの言葉  主人公は小学3年生のこっこだ。口癖は「うるさいぼけ」。糞(くそ)生意気な彼女の目を通して、私は懐かしいものに出会ってしまった。ほにゃららやほにゅれれやほにょろろである。いずれも仮名。要………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年05月15日

てんとろり/えーえんとくちから [著]笹井宏之

てんとろり/えーえんとくちから [著]笹井宏之

■孤独がうつくしく結晶化  2冊の短歌集の作者は、2009年に26歳で急逝した笹井宏之。『てんとろり』は第1歌集『ひとさらい』に続く第2歌集、『えーえんとくちから』は全体から選出された作品集である。  〈次々と涙のつぶ………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年04月10日
[ジャンル]文芸

こちらあみ子 [著]今村夏子 

こちらあみ子 [著]今村夏子 

■“ありえない”の塊のような女の子  主人公のあみ子には前歯が3本無い。ありえない、と思う。だって、21世紀の日本女性は脱毛処理が不完全なだけでNGなんでしょう。あみ子は10年近く片思いをしている相手の苗字(みょうじ)………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年03月20日
[ジャンル]文芸

まさかジープで来るとは [著]せきしろ、又吉直樹

まさかジープで来るとは [著]せきしろ、又吉直樹

■見えないもの照らし出す言葉たち  「自由律俳句集」と銘打たれている。が、全てを所謂(いわゆる)「あるある」ネタとして読むこともできそうだ。  「弱火にしたいのに消えた」(せきしろ)、「急に番地が飛んだぞ」(又吉直樹)………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年02月13日
[ジャンル]文芸

機嫌のいい犬 [著]川上弘美

機嫌のいい犬 [著]川上弘美

■川上弘美になる瞬間、味わえる句集  小説家川上弘美の第一句集である。優れた言語表現者が他ジャンルに挑んだとき、どんな作品をつくるのだろう、と思って手に取ってみたら、とても面白かった。純粋に句集としてみても魅力的だが、………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2011年01月16日
[ジャンル]文芸

蜜姫村 [著]乾ルカ 

蜜姫村 [著]乾ルカ 

■秘境の異様な秘密に吸い寄せられ  人里離れた秘境の村に秘密がある。村ぐるみで長年それを守り続けている。ちょっとした偶然から、そこに迷い込んでしまった旅人が「なんだかおかしいな」と疑問をもって調べようとしたために、目眩………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2010年12月12日
[ジャンル]文芸

鈴を産むひばり [著]光森裕樹 

鈴を産むひばり [著]光森裕樹 

■見慣れたモノが輝き放つ短歌集  《ドアに鍵強くさしこむこの深さ人ならば死に至るふかさか》    こんな短歌に出会って、えっ、と思う。私もドアに鍵を差し込んだことはある。その動作を今までに何万回繰り返したかわからない。………[もっと読む]

[評者]穂村弘(歌人)
[掲載]2010年10月24日
[ジャンル]文芸

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