いとうせいこう(作家・クリエーター)の書評

写真:いとうせいこうさん

いとうせいこう (作家・クリエーター)
1961年東京都生まれ。音楽や舞台、映画などの分野でも活躍。小説に『ノーライフキング』『ワールズ・エンド・ガーデン』『波の上の甲虫』『想像ラジオ』、エッセーに『ボタニカル・ライフ』(講談社エッセイ賞)など。奥泉光らとの共著に『文芸漫談』、みうらじゅんとの共著に『見仏記』もある。ホームページは「WATCH SEIKO」

民のいない神 [著]ハリ・クンズル

民のいない神 [著]ハリ・クンズル

■場所のサーガ紡ぐ地球文学  インドの血を引くイギリス作家、ハリ・クンズルの長編が面白い。舞台はいかにもアメリカらしいアメリカ、カリフォルニア州南部の砂漠である。そこに映画「未知との遭遇」に出て来たデビルズ・タワーのよ………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2015年03月29日
[ジャンル]文芸

島と人類 [著]足立陽

島と人類 [著]足立陽

■語りがいざなう「丸裸」の面白さ  冒頭からしばらく続く語りが小説の面白さのメディア的核心を突いていて、小魚が罠(わな)の奥へ動いて行ってしまうように、私たち読者もこの優しい追い込み漁に引っかかるに違いない。  語りは………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2015年03月22日
[ジャンル]文芸

素晴らしきソリボ [著]パトリック・シャモワゾー

素晴らしきソリボ [著]パトリック・シャモワゾー

■違和感こそクレオールの醍醐味  「語り部ソリボ・マニフィークは言葉に喉(のど)を掻(か)き裂かれて死んだ」と冒頭にある本作は、作者のデビュー間もない80年代後半に書かれた。つまり、のちにクレオール文学と呼ばれる潮流の………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2015年03月15日
[ジャンル]文芸

少女のための秘密の聖書 [著]鹿島田真希

少女のための秘密の聖書 [著]鹿島田真希

■女性たちが血肉化した矛盾  一人の少女がいて、中学1年生で思春期で、血のつながらない父と血のつながった母と暮らし、裏のアパートの店子である浪人生の青年の部屋へ、彼が滞納している家賃を取りに行く。青年はパンティー泥棒だ………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2015年02月22日
[ジャンル]文芸

九年前の祈り [著]小野正嗣

九年前の祈り [著]小野正嗣

■読者の心を浸食する「リアス式」  表題作が今回の芥川賞を獲得した本書には四つの、すべてが大分県の「リアス式海岸が独特の地形を作る海辺の土地」を舞台とし、近い時を基点とする短編が入っている。  各短編は自在に語りの時間………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2015年01月25日
[ジャンル]文芸

狂講—深井志道軒—トトントン、とんだ江戸の講釈師 [著]斎田作楽

狂講—深井志道軒—トトントン、とんだ江戸の講釈師 [著]斎田作楽

■権威も良識も笑いのめした男  深井志道軒の名前は、浅草で付き合いの長い人たちからよく聞いている。18世紀中盤、浅草寺の境内によしず張りをし、軍談を講釈した。  フツーの講釈師ではなかった。書名にも「狂講」とある通り、………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2014年12月14日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

愉楽 [著]閻連科

愉楽 [著]閻連科

■権力を恐れぬケタ外れの腕力  閻連科。とんでもない腕力の作家である。もちろん創作が人間という大地を掘る力であり、想像という砲丸を限りなく遠くまで届かせる力のことだ。ユーモアが起こす笑い声の大きさ、あるいは泣き声が震わ………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2014年11月30日
[ジャンル]文芸

イチョウ—奇跡の2億年史—生き残った最古の樹木の物語 [著]ピーター・クレイン

イチョウ—奇跡の2億年史—生き残った最古の樹木の物語 [著]ピーター・クレイン

■人類を魅了する「生きた化石」  イチョウの葉が黄色く色づく季節がやってきた。銀杏(ぎんなん)がおいしい季節もこれからだ。  日本全国の道路脇に、あるいは神社仏閣の敷地内にイチョウはある。いくら樹木に興味のない人でも、………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2014年11月16日
[ジャンル]科学・生物

偶然の日本文学―小説の面白さの復権 [著]真銅正宏

偶然の日本文学―小説の面白さの復権 [著]真銅正宏

■虚構の自由めぐる論争と時代性  現実には偶然がつきものである。偶然が日々を作り出していると言ってもいい。  ふと駅のホームで昔の知人と会ってとか、たまたま同じバッグを持っていて話が弾んでとか、親が同郷でとか。  しか………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2014年11月09日
[ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝

京城のダダ、東京のダダ——高漢容と仲間たち [著]吉川凪

京城のダダ、東京のダダ——高漢容と仲間たち [著]吉川凪

■日韓の若さの輝きと悲しさ  京城、と植民地時代に日本が呼んでいた現在のソウルに、一人のダダイストがいた。本名は高漢容(コハニョン)。〈高ダダ〉と名乗って、朝鮮の新聞や雑誌にダダを紹介したという。すなわち「既成の権威、………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2014年10月05日
[ジャンル]歴史

かつては岸 [著]ポール・ユーン

かつては岸 [著]ポール・ユーン

■もやの向こうに歴史の爪痕  作者ポール・ユーンは韓国系アメリカ人で、訳者あとがきによればO・ヘンリー賞も獲得している若手作家。  透明感のある文章で貫かれた短編集の背景はすべてソラ島という架空の場所(済州島がモデルら………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2014年09月07日
[ジャンル]文芸

シャバはつらいよ [著]大野更紗

シャバはつらいよ [著]大野更紗

■難病・震災、ユーモア交え描く  第1作『困ってるひと』では若くして突然始まってしまった自らの難病(自己免疫疾患系の希少な病)と、過酷な入院生活を驚くべきユーモアで描き、現在の医療制度、医師と患者の戦いを軽いタッチで伝………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2014年08月17日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

ボラード病 [著]吉村萬壱

ボラード病 [著]吉村萬壱

■寓話を超えて迫り来るリアル  これは寓話(ぐうわ)ではない。  最後に教訓は語られず、呪詛(じゅそ)で終わる。  そしてどんなノンフィクションよりもリアルであり、切実に心のどこかに迫る。あたかもカフカの短編のように。………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2014年08月10日
[ジャンル]社会

夜は終わらない [著]星野智幸

夜は終わらない [著]星野智幸

■物語を欲望するニセ暴君の時代  『アラビアンナイト』はご存じのように千夜もの間、暴君に物語を語って聞かせ、自らの命をながらえるばかりか、それなしではいられなくしてしまうシェヘラザードという女性が主人公であった。  よ………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2014年07月13日
[ジャンル]文芸

謎ときガルシア=マルケス [著]木村栄一

謎ときガルシア=マルケス [著]木村栄一

■魔術的魅力の背景、誠実に解説    今年の4月に87歳で亡くなったラテンアメリカ文学の巨匠、ノーベル文学賞受賞者でもあるガブリエル・ガルシア=マルケスに関しては、すでに幾つかの書物が訳出されて店頭に並んでいる。  そ………[もっと読む]

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)
[掲載]2014年06月29日
[ジャンル]文芸

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