小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)の書評

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小野正嗣 (作家・明治学院大学准教授)
1970年大分県生まれ。比較文学者(現代フランス語圏)。著書に『水に埋もれる墓』(朝日新人文学賞)『にぎやかな湾に背負われた船』(三島由紀夫賞)『森のはずれで』『マイクロバス』『浦からマグノリアの庭へ』『獅子渡り鼻』など。共訳書に『ミゲル・ストリート』『ガラスの宮殿』など。

ホーム [著]トニ・モリスン

ホーム [著]トニ・モリスン

■人生取り戻す「故郷への帰還」  トロイア戦争から帰還する英雄の遍歴を歌った古代ギリシアの『オデュッセイア』のように、文学は〈故郷への帰還〉を好んで描いてきた。ノーベル賞にも輝いた黒人女性作家が、80歳を越えたいま、選………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2014年03月30日
[ジャンル]文芸 人文

英子の森 [著]松田青子

英子の森 [著]松田青子

■〈わたし〉は空虚な器なのか  〈大人になる〉とは、自分の前に広がる無数の可能性のほとんどを諦めることだ。だが、商品であれサービスであれ情報であれ現代社会が提示するおびただしい選択肢は、自分は万能細胞のようにまだ何にで………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2014年03月23日
[ジャンル]文芸

ヴィクラム・ラルの狭間の世界 [著]M・G・ヴァッサンジ

ヴィクラム・ラルの狭間の世界 [著]M・G・ヴァッサンジ

■いびつな社会生きる「よそ者」  最初は戸惑うかもしれない。主人公はヴィクラム・ラルという、国家的な汚職事件に関わって逃亡中のインド系の男。そして彼の追憶が向かうのは、まだ大英帝国の植民地であった1950年代のケニアの………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2014年03月16日
[ジャンル]文芸 人文

兵士たちの肉体 [著]パオロ・ジョルダーノ/イエロー・バード [著]ケヴィン・パワーズ

兵士たちの肉体 [著]パオロ・ジョルダーノ/イエロー・バード [著]ケヴィン・パワーズ

■日常と交錯する現代の戦争描く  戦争について、現実の戦場を体験した一介の兵士たちが残した証言の言葉が目に触れ、読まれ続けることは存外少ない。虐殺や災厄の被害者がそうであるように、経験があまりに生々しく凄惨(せいさん)………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2014年02月09日
[ジャンル]文芸

穴 [著]小山田浩子

穴 [著]小山田浩子

■獣を追いかけて落ちた先には  文学を読むとは、作家が想像力で掘った〈穴〉にはまることなのだろう。『不思議の国のアリス』が落ちた深い穴、カフカの複雑に入り組んだ〈巣穴〉。そしていま、小山田浩子が掘った、いわば等身大の穴………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2014年02月02日
[ジャンル]文芸

国境〔完全版〕 [著]黒川創

国境〔完全版〕 [著]黒川創

■いかなる線からも自由な視線で  読めば、作品ひいては世界への向き合い方に靴に砂でも入ったみたいな違和が生じ、各自に足下を見直させる。卓越した文学評論の名に値するすべてが本書にはある。  我々は漱石や鴎外を教科書に載る………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2014年01月19日
[ジャンル]歴史 文芸

沈むフランシス [著]松家仁之

沈むフランシス [著]松家仁之

■美しい文体から届く不穏な雑音  タイトルが謎めいている。沈むフランシス?  だが冒頭、視界に飛びこんでくるのは、水の流れに運ばれていく人間の体だ。死体? 水に浮かぶこの体の持ち主がフランシスなのだろうか?  謎を宙づ………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年12月01日

さようなら、オレンジ [著]岩城けい

さようなら、オレンジ [著]岩城けい

■言葉の壁と格闘する女性たち  開くのをためらう本がある。こんな小説をずっと読みたかったのだ!と心を鷲掴(わしづか)みされる予感が読む前からあるからだ。そしてほら、予感はすでに確信に変わっている。  本書は2つの物語か………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年10月20日
[ジャンル]文芸

特派員ルポ―サンダルで歩いたアフリカ大陸 [著]高尾具成

特派員ルポ―サンダルで歩いたアフリカ大陸 [著]高尾具成

■ひとつながりの希望と絶望  2008年3月、毎日新聞記者の著者は、南アフリカのヨハネスブルクに赴任する。以後4年にわたって、この広大な大陸の10近くの国に足を運んだルポが本書である。  6月には横浜でアフリカ開発会議………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年09月01日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

ミレナへの手紙 [著]フランツ・カフカ

ミレナへの手紙 [著]フランツ・カフカ

■返事が待てない、障害だらけの恋  カフカの魅力は小説に尽きない。『ボヴァリー夫人』を書いたフローベールの『書簡』と並び、カフカの『日記』と『書簡』は世界中で作家たちに読まれ続けてきた。  手紙という私的な文章ながらも………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年08月25日
[ジャンル]文芸

爪と目 [著]藤野可織

爪と目 [著]藤野可織

■「あなた」が気づかない欲望  人体を覆う表皮のうち特別な存在が二つある。爪と目である。前者は自由な両手の指先を保護し、後者からは外界の情報の8割以上が入る。  かくも重要だからこそマスカラやマニキュアで飾り立てねばな………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年08月18日
[ジャンル]文芸

世界を回せ(上・下) [著]コラム・マッキャン

世界を回せ(上・下) [著]コラム・マッキャン

■綱渡りへの視線、境遇越えつなぐ  1974年8月7日の早朝、マンハッタンの今はなき世界貿易センターのツインタワーの間で綱渡りした男がいた。地上400メートル(!)に張られたワイヤーの上を歩いたのは、フランス人綱渡り師………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年07月21日
[ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝

白い人びと―ほか短篇とエッセー [著]フランシス・バーネット

白い人びと―ほか短篇とエッセー [著]フランシス・バーネット

■死は虚無ではなく目覚めなのだ  子供に大人には見えないものが見えるのは、生まれる前の、だからまだ生が死と未分化な状態の記憶が残っているからなのか。表題作「白い人びと」の主人公イゾベルは、小さな子供さながら死を現実的に………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年07月14日
[ジャンル]文芸

忘れられない日本人移民―ブラジルへ渡った記録映像作家の旅 [著]岡村淳

忘れられない日本人移民―ブラジルへ渡った記録映像作家の旅 [著]岡村淳

■〈家〉なき存在の現実を映す  著者の岡村淳は1987年にブラジルに移住して以来、小型ビデオカメラを片手にたった一人でドキュメンタリーを撮り続けている。彼の初期の代表作が、ナメクジの生態を記録した番組であることの意味は………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年06月30日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること [著]ネイサン・イングランダー

アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること [著]ネイサン・イングランダー

■生還者は「人間的」になったのか  艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にす。だが、途方もない災厄を経験した者はその分だけ人格者になれる、とナイーブに考えるのは幻想である。ヨーロッパで約600万人が虫けらのように殺戮(さつ………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年06月02日
[ジャンル]文芸 人文

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