原武史(放送大学教授・政治思想史)の書評

写真:原武史さん

原武史 (放送大学教授・政治思想史)
1962年東京都生まれ。近現代の天皇・皇室研究のほか、鉄道や団地などの「空間政治学」を提唱。著書に『「民都」大阪対「帝都」東京』(サントリー学芸賞)『滝山コミューン一九七四』(講談社ノンフィクション賞)『昭和天皇』(司馬遼太郎賞)など。

囚われの島 [著]谷崎由依

囚われの島 [著]谷崎由依

 謎めいた小説だ。第一部と第三部は現在の東京が、第二部は昭和初期の京都府丹後地方にあるとおぼしき村が主な舞台となっている。第一部、第三部と第二部をつなぐのは蚕である。  主人公の由良という女性の名前は丹後の由良川に通じる………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年08月06日
[ジャンル]文芸

間取りと妄想 [著]大竹昭子

間取りと妄想 [著]大竹昭子

■見取り図に浮かぶ心のさざ波  同じ間取りの家が一カ所に集まる団地で人生の大半を過ごした私は、間取りがそこに住む人々の意識を規定することに敏感にならざるを得なかった。「誰もが同じ」という強い平等意識は、団地という同質的………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年07月30日
[ジャンル]文芸

色仏 [著]花房観音

色仏 [著]花房観音

■幕末の京、女の観音像に妖気  時は幕末。北近江のある村の寺に十一面観音があった。本書の主人公、烏(からす)は、その寺に住み、観音を眺めながら育った。烏にとって十一面観音は、完璧な女の姿を装いながら、時間を超越した不動………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年07月09日
[ジャンル]文芸

感性文化論―〈終わり〉と〈はじまり〉の戦後昭和史 [著]渡辺裕

感性文化論―〈終わり〉と〈はじまり〉の戦後昭和史 [著]渡辺裕

■聴覚より視覚優位へと認識転換  戦後のある時期まで、鉄道の案内の多くは聴覚を通してなされていた。車内では車掌が、駅のホームでは駅員が次の駅や乗り換えなどを肉声で放送し、客はそうした声に耳を傾けた。車掌の語りそのものが………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年06月25日
[ジャンル]歴史

王妃たちの最期の日々 上・下 [編]ジャン=クリストフ・ビュイッソン、ジャン・セヴィリア

王妃たちの最期の日々 上・下 [編]ジャン=クリストフ・ビュイッソン、ジャン・セヴィリア

■国境も越えていく波乱の生涯  ヴィクトリア女王のような例外は別として、皇帝や国王のほとんどは男性だった。皇后や王妃は皇帝や国王ほど権力をもたず、目立たなかったように見えなくもない。しかし彼女らの生涯は、時として男性の………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年06月11日
[ジャンル]歴史

夜の谷を行く [著]桐野夏生

夜の谷を行く [著]桐野夏生

■連合赤軍、女性たちの理想は…  小学3年だった1971年7月、栃木県那須で食べた森永のバニラアイスの味を、私はいまも記憶している。その記憶は、本人にとっては絶対的であり、他者は反駁(はんばく)できない。「あなたの記憶………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年05月14日
[ジャンル]文芸

かわうそ堀怪談見習い [著]柴崎友香

かわうそ堀怪談見習い [著]柴崎友香

 土地には固有の「霊」がある。神武天皇が漂着した伝説がいまも息づく大阪の場合はなおさらそうだ。無数の人々がここで生涯を閉じたばかりか、大坂の陣や太平洋戦争の空襲でも死者があふれた。一見近代化した都市の風景の裏側には、この………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年05月07日
[ジャンル]文芸

日本精神史 自然宗教の逆襲 [著]阿満利麿

日本精神史 自然宗教の逆襲 [著]阿満利麿

■天皇崇拝支える基盤は変わらず  昨年8月8日に発表された現天皇の「おことば」は一部で「第2の人間宣言」と呼ばれた。1946年1月1日の詔書で現御神(あきつみかみ)(現人神〈あらひとがみ〉)であることを否定した昭和天皇………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年04月16日
[ジャンル]人文

青年の主張 まなざしのメディア史 [著]佐藤卓己

青年の主張 まなざしのメディア史 [著]佐藤卓己

 60年安保闘争や学園紛争など、若年層が注目を集めた事件は少なくない。それらをつなげた戦後史の「語り」も依然として流布している。しかし、表層的な事件を追っているだけでは、戦後史の実像に迫ったことにならない。  著者が注目………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年04月02日
[ジャンル]社会

ポピュリズムとは何か―民主主義の敵か、改革の希望か [著]水島治郎

ポピュリズムとは何か―民主主義の敵か、改革の希望か [著]水島治郎

■世界で同時並行する現象を分析  政治学の世界というのは細かな分業から成り立っている。政治史の分野だけでも欧州や米国、日本などに分かれ、さらに欧州の中で英国やフランス、ドイツなどに分かれる。各国の専門家はひたすら史料に………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年03月19日
[ジャンル]政治 社会

徳川家康―われ一人腹を切て、万民を助くべし [著]笠谷和比古

徳川家康―われ一人腹を切て、万民を助くべし [著]笠谷和比古

■死後の体制転覆を恐れた理由  中華帝国や朝鮮王朝のように、儒教が体制を正当化するイデオロギーとして定着していれば、皇帝や国王は「天」から支配の正統性を与えられる。そこでは武力ではなく、儒教的な徳をもつことが「民」を統………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年03月12日
[ジャンル]歴史

出雲を原郷とする人たち [著]岡本雅享

出雲を原郷とする人たち [著]岡本雅享

■全国の分布、執念の取材で解明  東京の明治神宮には、正月三が日だけで300万人あまりが訪れる。しかし祭神が明治天皇と昭憲皇太后であり、大正時代に建てられた新しい神社だと知っている参詣(さんけい)者は多くないだろう。明………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年02月05日
[ジャンル]人文 社会

日本のマラソンはなぜダメになったのか [著]折山淑美

日本のマラソンはなぜダメになったのか [著]折山淑美

 日本の男子マラソン界は冬の時代が続いている。日本記録は10年以上も更新されていないし、その記録すら世界では70位にも入っていない。かつてお家芸とも呼ばれたマラソンが、なぜここまで凋落(ちょうらく)したのか。本書は宗茂や………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年01月22日
[ジャンル]人文 社会

日本の「アジール」を訪ねて―漂泊民の場所 [著]筒井功

日本の「アジール」を訪ねて―漂泊民の場所 [著]筒井功

■権力が及ばぬ地域の実態たどる  アジールとは、権力の及ばない地域のことである。そうした地域は国家権力が強まる明治以降、しだいに消滅したとされている。しかし本書は、乞食(こじき)やハンセン病者、職業不詳の漂泊民らが集ま………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年01月15日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

物語の向こうに時代が見える [著]川本三郎

物語の向こうに時代が見える [著]川本三郎

 書評という仕事はなかなか難しい。単なる内容の紹介や要約にとどまっていてはいけない。かと言って評者の見解が全面的に出てもいけない。内容に寄り添いつつ、いかにして評者ならではの「読み」ができるかが問われるのだ。  本書は、………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2017年01月08日
[ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝

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