中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)の書評

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中村和恵 (詩人・明治大学教授・比較文学)
1966年新潟市生まれ。小説、詩、翻訳などで活躍。主な著書に、『地上の飯 皿めぐり航海記』『日本語に生まれて 世界の本屋さんで考えたこと』『ドレス・アフター・ドレス クローゼットから始まる冒険』『世界中のアフリカへ行こう』(共著)など。

ショコラ―歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯 [著]ジェラール・ノワリエル

ショコラ―歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯 [著]ジェラール・ノワリエル

■名探偵のように事実掘り起こす  彼が何者なのか、当時もいまも、知る人はほとんどいなかった。19世紀末から20世紀初頭のパリで一世を風靡(ふうび)したサーカス芸人ショコラ、本名ラファエルは、独立前のキューバでスペイン商………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2017年03月26日
[ジャンル]文芸

職人の近代―道具鍛冶千代鶴是秀の変容 [著]土田昇

職人の近代―道具鍛冶千代鶴是秀の変容 [著]土田昇

 やわらかにして鋭い。独特の文体は、刃物店の3代目店主として父から聞き知った逸話の下地に、あるスタイルを追求する意志が加わったものだろう。刀工の家に生まれた大工道具鍛冶(かじ)の名工・是秀(これひで)の、デザイン性の高い………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2017年03月19日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能

キャッツ・アイ [著]マーガレット・アトウッド [訳]松田雅子ほか

キャッツ・アイ [著]マーガレット・アトウッド [訳]松田雅子ほか

■透徹した目で憎悪の結晶を解体  老年にさしかかり、成功を手にした画家イレインは自分の回顧展のため、トロントに戻ってくる。この町は嫌いだといいながら彼女は、ここでの半生の記憶を丹念にたどっていく。子どもの頃から好きだっ………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2017年02月19日
[ジャンル]文芸

負債論―貨幣と暴力の5000年 [著]デヴィッド・グレーバー  [監訳]酒井隆史 [訳]高祖岩三郎、佐々木夏子

負債論―貨幣と暴力の5000年 [著]デヴィッド・グレーバー  [監訳]酒井隆史 [訳]高祖岩三郎、佐々木夏子

  ■ラディカルに「神話」を解体  お金って謎。最近ますますわからない。貧乏人向け高金利住宅ローンが準優良(サブプライム)で、それを証券にして売るって、なにそれ。  本書は経済学者ではなく、人類学者の負債論。なにしろ事例………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2017年02月12日
[ジャンル]経済 人文

わたしはこうして執事になった [著]ロジーナ・ハリソン

わたしはこうして執事になった [著]ロジーナ・ハリソン

 英国女性初の国会議員アスター子爵夫人に35年仕えた著者が、自らの回顧録につづき、アスター一族に仕えた男性奉公人五人の話を聞き、まとめた。カズオ・イシグロ『日の名残り』の執事のモデルといわれる人も登場する。お屋敷の舞台裏………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2017年01月29日
[ジャンル]歴史 文芸

メイキング・オブ・アメリカ―格差社会アメリカの成り立ち [著]阿部珠理 ブラック・ホークの自伝―あるアメリカン・インディアンの闘争の日々 [著]ブラック・ホーク

メイキング・オブ・アメリカ―格差社会アメリカの成り立ち [著]阿部珠理 ブラック・ホークの自伝―あるアメリカン・インディアンの闘争の日々 [著]ブラック・ホーク

■力=正義という信条を問う  オバマからトランプへ。ケニア出身の父を持つ初の黒人大統領から、排外的言動で世論を煽(あお)る白人「不動産王」大統領へ。アメリカ合衆国はしばしば、両極端ともいえる相貌(そうぼう)を見せる。い………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2017年01月15日
[ジャンル]歴史 社会

宗秋月全集―在日女性詩人のさきがけ [著]宗秋月

宗秋月全集―在日女性詩人のさきがけ [著]宗秋月

■路地裏の女たちの声の「氾濫」  自転車でよく、鶴橋のコリアン・マーケットに行った。土地勘のないわたしが大阪に職を得て住みついたのが偶然、そこから駅ひとつの場所だったのだ。迷路のような路地に色鮮やかな食材や衣類がひしめ………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2016年12月11日
[ジャンル]社会

ひとが優しい博物館―ユニバーサル・ミュージアムの新展開 [編著]広瀬浩二郎

ひとが優しい博物館―ユニバーサル・ミュージアムの新展開 [編著]広瀬浩二郎

 「すべての人の好奇心のための博物館」を目指す、ユニバーサル・ミュージアム論の公開シンポジウム報告集。見常者、触常者、触文化、手学問と、興味深い言葉がぽこぽこ顔を出す。  冒頭の広瀬浩二郎と相良啓子の対談がおもしろい。見………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2016年11月20日
[ジャンル]社会

ミクロストリアと世界史―歴史家の仕事について [著]カルロ・ギンズブルグ

ミクロストリアと世界史―歴史家の仕事について [著]カルロ・ギンズブルグ

■問いに固執せず、代弁もしない  ミクロストリア、英語ではマイクロヒストリー。粉挽屋(こなひきや)の異端審問記録から十六世紀イタリアの農民文化に光を当てた『チーズとうじ虫』(一九七六年)で、ギンズブルグはこの語を世に知………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2016年11月06日
[ジャンル]歴史 人文

沖縄の乱―燃える癒しの島 [著]野里洋

沖縄の乱―燃える癒しの島 [著]野里洋

 沖縄はいま怒っている。米軍統治時代に移住し、長年沖縄を見つめてきた著者が、その理由をわかりやすく説く。普天間飛行場移設問題を核に、第2次大戦から現在までの状況を顧み、政治家や識者らの発言を分析、沖縄の経験をそれぞれ異な………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2016年10月30日
[ジャンル]政治 社会

近代科学のリロケーション [著]カピル・ラジ

近代科学のリロケーション [著]カピル・ラジ

■インドで協力して築かれた土台  近代科学は純粋に西ヨーロッパ発のものとして理解されるべきなのだろうか。そうではない、という非ヨーロッパ出身者の反論は、自分が属する文化に科学的思考はすでに存在していたんだといった、ナシ………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2016年10月09日
[ジャンル]科学・生物

あたらしい名前 [著]ノヴァイオレット・ブラワヨ

あたらしい名前 [著]ノヴァイオレット・ブラワヨ

■世界中の矛盾に向かう子どもら  国盗(と)りゲームで子どもたちが陣地につける国名は、勝敗には関係ない。でも主人公のダーリンと、友達のチポやバスタードらには、人気の国と不人気の国がある。アメリカは最高。自国ジンバブエは………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2016年09月25日
[ジャンル]文芸 社会

死すべき定め―死にゆく人に何ができるか [著]アトゥール・ガワンデ 脳外科医マーシュの告白 [著]ヘンリー・マーシュ

死すべき定め―死にゆく人に何ができるか [著]アトゥール・ガワンデ 脳外科医マーシュの告白 [著]ヘンリー・マーシュ

■人生の終末描く、医療は文学  医療は文学的なんだよと若い研修医がわたしにいった。十九歳の夏、脳下垂体腫瘍(しゅよう)の手術のため入院した病院でのことだ。手術時間も比較的短い良性腫瘍は重篤な患者さんたちの前では気楽なも………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2016年09月11日
[ジャンル]人文 医学・福祉

裸の華 [著]桜木紫乃

裸の華 [著]桜木紫乃

 踊り一筋のストリッパーが骨折して舞台を降り、四〇歳で故郷札幌に戻って、ススキノで店を開く。従業員はわけありのバーテンダーと、性格のまるで違う新人ダンサー二人。どこまで演歌な話になるかと思いきや、なんだこの潔さ。  それ………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2016年08月28日
[ジャンル]文芸

リトル・ボーイ [著]マリーナ・ペレサグア

リトル・ボーイ [著]マリーナ・ペレサグア

■遠い被爆体験、新世代が描く  七十年経ち、反省の時代は終わった。そんなジェスチャーが目につくいま、先の大戦はいかに語られるのか。ことばの姿勢が新たに問われる現状の文脈は、やむをえずグローバルだ。すべてのことはつながっ………[もっと読む]

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)
[掲載]2016年07月24日
[ジャンル]文芸

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