星野智幸(小説家)の書評

写真:星野智幸さん

星野智幸 (小説家)
1965年米ロサンゼルス生まれ。2年半の新聞記者生活を経て、メキシコへ留学。主な著書に『最後の吐息』(文藝賞)、『目覚めよと人魚は歌う』(三島由紀夫賞)、『ファンタジスタ』(野間文芸新人賞)、『俺俺』(大江健三郎賞)、『夜は終わらない 』など。

切腹考 [著]伊藤比呂美

切腹考 [著]伊藤比呂美

■鴎外の世界から生と死を問う  切腹好きの伊藤比呂美さんが、切腹に導かれて森鴎外ワンダーランドに分け入ったら、自分が鴎外ワールドの登場人物になってしまった。伊藤さんの存在自体が、鴎外の言葉と混ざっていった。それがこの驚………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2017年03月26日
[ジャンル]文芸

こびとが打ち上げた小さなボール [著]チョ・セヒ

こびとが打ち上げた小さなボール [著]チョ・セヒ

■負の連鎖を断ち切るための祈り  長年、韓国と日本の文学の関係は非対称で、韓国は日本の文学を翻訳するが、日本は韓国の文学をあまり翻訳してこなかった。21世紀になってから状況は変化し、ここ5年ぐらいで韓国語文学の日本語訳………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2017年03月12日
[ジャンル]文芸

襲撃 [著]レイナルド・アレナス

襲撃 [著]レイナルド・アレナス

■野生の詩人が現実を爆破する  驚異の亡命作家、キューバのアレナスが残した傑作の一つである。  「超厳帥」なる独裁者が治めるその国では、住民は家族を解体され、「複合家庭」なる大収容所で眠る。朝になると列を作り、それをバ………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2017年02月26日
[ジャンル]文芸

言葉の贈り物 [著]若松英輔

言葉の贈り物 [著]若松英輔

■自分が自分であるための営み  若松英輔の本を読んでいると、自分が誰なのかわからなくなる瞬間がある。今読んでいる文章を、自分が書いたかのように錯覚するのである。そして、誰が書いたかなどどうでもよくなり、自分という限界か………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2017年02月12日
[ジャンル]文芸

N女の研究 [著]中村安希

N女の研究 [著]中村安希

■新しい働き方を創造する人たち  20代半ばで私が会社を辞める決断をしたとき、モデルケースとなったのは女性の友人や先輩だった。限界を感じるとステータスのある仕事でもあっさり辞め、外聞にこだわらずにより自分に合った仕事へ………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2017年01月29日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

マラス―暴力に支配される少年たち [著]工藤律子

マラス―暴力に支配される少年たち [著]工藤律子

■ギャングしか選択肢のない社会  私が中米を旅した1990年代前半、各国は内戦が終わったばかりだった。社会も経済も荒廃し、中米からメキシコを陸路で越えてアメリカに出稼ぎに行く人たちが後を絶たなかった。  だがアメリカ社………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2017年01月15日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

坊っちゃんのそれから [著]芳川泰久

坊っちゃんのそれから [著]芳川泰久

■明治の現場が迫る名作の続編  超大型新人の登場である。文芸批評家にしてフランス文学研究者、翻訳家、大学教授の立場で現代文学を作ってきた芳川泰久が、本格的に小説家デビューした。その最初の作品は、夏目漱石の名作『坊っちゃ………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年12月04日
[ジャンル]文芸 人文

ミズーラ―名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度 [著]ジョン・クラカワー

ミズーラ―名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度 [著]ジョン・クラカワー

■被害者に向けられる疑いの目  「レイプ神話」をご存知(ぞんじ)だろうか? レイプとは暗闇に潜んで相手を襲う変質者の性犯罪であり、相手の抵抗を押しきって振るわれる暴力である、というイメージを指す。これは大半のレイプの実………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年11月20日
[ジャンル]社会

ピアニストは語る [著]ヴァレリー・アファナシエフ

ピアニストは語る [著]ヴァレリー・アファナシエフ

■森の中で過ごすような音楽とは  好き嫌いにかかわらず、アファナシエフは誰にとっても唯一無二のピアニストだ。この原稿を書いている前日に私はコンサートに行ってきたばかりで、体の緊張が和らいでいる。私にとってアファナシエフ………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年10月30日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

ルポ 貧困女子 [著]飯島裕子 貧困の現場から社会を変える [著]稲葉剛

ルポ 貧困女子 [著]飯島裕子 貧困の現場から社会を変える [著]稲葉剛

■弱者への無理解、改めるために  2カ月ほど前、経済的事情で進学を断念する女子高校生がNHKのニュースで取り上げられたとき、映っていた自室の所持品が安価ではないなどの理由で非難された。貧困を解説した本は十分存在するのに………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年10月16日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

サッカーと愛国 [著]清義明

サッカーと愛国 [著]清義明

■差別と暴力を乗り越えるために  2014年3月、浦和レッズのホーム、埼玉スタジアムの客席ゲートに、「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕が吊(つ)るされた。日本人専用、外国人お断り、という意味で、まぎれもない………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年09月04日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

ジニのパズル [著]崔実

ジニのパズル [著]崔実

■無力な人々の背を押す強靱な力  勇気あるデビュー作である。「苦しい時は私の背中を見なさい」とチームメイトに言った、女子サッカーの澤穂希のような存在の小説だ。  在日3世の少女ジニは、自分の居場所を求めて、小学校は日本………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年08月07日
[ジャンル]文芸 社会

イエスの幼子時代 [著]J・M・クッツェー

イエスの幼子時代 [著]J・M・クッツェー

■善意だけの静かな国、その恐怖  世界の酷薄さと暴力性を最も知悉(ちしつ)している作家クッツェーの、驚異的な新作。あまりに面白すぎて、作品世界から戻れずにいる。  いわゆる近未来もの。ノビージャという国は、過去を捨て新………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年07月24日
[ジャンル]文芸

男子問題の時代?―錯綜するジェンダーと教育のポリティクス [著]多賀太

男子問題の時代?―錯綜するジェンダーと教育のポリティクス [著]多賀太

■男たちの「生きづらさ」を考える  「女性専用車は男性差別です」とプラカードを掲げて、女性専用車両に乗り込んでくる男性がまれにいる。なぜ、そんな不快なことをするのだろうか。それで自分の生きづらさが変わるわけでもあるまい………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年07月17日
[ジャンル]教育 人文 社会

僕の違和感(上・下) [著]オルハン・パムク

僕の違和感(上・下) [著]オルハン・パムク

■イスタンブル、路地裏の人生  海外旅行の前には、その土地の作家の小説を読むといい。そこに生きる人たちの感覚がわかるから。イスタンブルに行くならパムクを読むことは欠かせない。本書を読みながら、私は主人公と一緒になって、………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年06月05日
[ジャンル]文芸 社会

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